チェコ映画 (2002)
この映画は、「13歳の少年を捜索しているというラジオ番組」を元に、熟練の女性作家イヴァ・プロハスコヴァ(Iva Procházková)によって1998年に小説化された同名原作を、作家自身が脚本を書いて映画化された作品。オタ・ホフマン国際児童青少年映画祭で、最高賞を受賞している。これまで観てきた「少年誘拐」の映画は、すべて誘拐された少年を如何に救い出すかが課題だった。しかし、この映画では、誘拐は、少年リボルの素早い脱走ですぐに解決するが、逆に、誘拐犯からの金銭要求がなかったことから、リボルを愛情なく養ってきた伯父伯母は、彼は家出した、それも、家から高価なブレスレットを盗んで逃げ出たと思い込み、警察も少年犯罪として捜索に当たるという、他に例のない悲劇に変わる。リボルは、誘拐犯から必死に逃げ脱した際、飛び乗った田舎の列車の終点で、伯父伯母に連絡しようと電話を求めて近くのパネンコの家に行くが、そこで、「1ヶ月前に孤児院から逃げ出した問題児グスタ」だと確信され、そうじゃないと言っても嘘だと思われる。さらに悪いことに、伯父に電話をかけると、逃亡と盗難の罪で「完全に縁を切った」と告げられる。リボルの危機を救ったのは、パネンコ夫婦と、リボルと同じ年頃の娘、養子の姉弟の5人が とても親切で、リボルをグスタとして、家族の一員のように迎える。この幸福も、溺死したグスタが発見されると崩壊しかけるが、義兄になったフィリップの説得で、リボルはすべてをパネンコ夫妻に打ち明け、伯父伯母や警察との問題も解消し、正式な養子としてリボル・パネンコとしての人生を始める。原作との大きな違いは、原作の最後の方に、「ヨアン伯母さんとミハル伯父さんが、私の誕生日を祝ってくれた時、私は13歳だった。当時、私の名前はグスタではなくリボルだった」という文章がある。つまり、彼は、その後リボルの名を捨て、養子となってからはグスタ・パネンコとなる〔映画では、「エリックとブランカは、僕を もう『グスタ』とは呼ばない」となっている〕。
この映画を入手したのは2019年6月。画質は悪く、字幕もないので、中身を観ることもなかった。2002年の映画で20年以上字幕が作られないということは、永久に字幕がないに等しいので消去しても良かったのだが、なぜか捨てずに 取っておいた。そして、今回、「次回に何を紹介するか」で壁に突き当たった時、たまたま https:// www.opensubtitles.org/en/search/subs を見てみたら、ロシア語字幕が新たに存在していた。さっそく、感謝しながら入手し、ただし、ロシア語では意味不明なので、ラフな自動翻訳で日本語にしてから映画を観てみたら、実に面白いので、すぐ紹介することに決めた。ロシア語の正しい翻訳には、imTtanlator というサイトを利用して英訳し、それでも、意味不明の場合は、AIに訊いたり、ロシア語のネット辞書で英語に直し、ほぼ100%正確な訳が完成した。今回は、台詞が重要な映画なので、少し長くなってしまったが、重要な会話は全訳に努めた。他に書くことがなかったので、裏話で済ますことにした。なお、この映画には、チェコ本国でもDVDは存在せず、VHSしか販売していない。AdobeのBridgeとPhotoshopを駆使しても、画質の向上はこれが限界なので、普通より写真を若干小さくしている。
主役のリボル役は、ヴォイテフ・コテック(Vojtěch Kotek)。1988年1月8日生まれ。映画の撮影は2001年なので、当時13歳。映画の設定と同じ。彼は、これが映画初出演だが、8歳の時から『ハリー・ポッター』の吹き替えを始め、声変わりした後も続け、全シリーズすべてを担当した。多数の映画・TVに出演し、現在も俳優、監督、ミュージシャンとして活躍している。下の写真は、左が2作目の「Tuláci」(2002、TV)、右が3作目の「Smrt pedofila」(2004、TV)。
あらすじ
映画の冒頭、主人公リボルのナレーションが入る。「今日、僕は気付いた。これは偶然じゃなかったんだと。避けられないことだったんだ。互いに惹かれ合う人がいたから… たとえ遠く離れていても。それに、突然襲いかかった惨事も。あの6月の朝、休みが始まる2週間前、僕はまだ何も気付いちゃいなかった。すべてがいつも通り。何の予兆もなかった… まもなくすべてが根本的に変わってしまい、二度と元通りにならなくなるなんて」。そして、リボルが所属するプラハの名門私立寄宿学校の様子が映される。最初は歴史の授業、次が木工作業の見学。筋肉隆々の体育の講師が、「人生じゃ、いつ、何が役に立つか分からん」と言うと、リボルと友人の前で電動ドライバーの使い方を実演する(1枚目の写真、矢印)。3番目が学食での皿盛りシーンで、リボルが 「マッシュポテトだけでいいです」と言うと、配膳係の女性が 「どうして?」と訊く。リボルが 「カリフラワーが苦手だから」と言うと、名門校の割には口の悪い女性が 「あんたが、もし私の子だったら、目の前に座らせて全部食べさせてやる」と言いつつ、マッシュポテトだけの皿を渡す(2枚目の写真、矢印)。リボルは 「そんなことしたら、おばさんの目の前で吐いちゃうよ」と言って立ち去る。4番目は、夜になり、誰もいないサロンで、リボルがピアノを弾いている(3枚目の写真、矢印)。5番目は、日中、リボルと友人が、教員用のシャワー室の木の床に、電動ドライバーでサンダルをネジで固定し、それを履こうとしたさっきの講師が床にうつ伏せに転倒する。

金曜日、リボルが寮の部屋で何かしていると、「♪スーツケースにはお金がいっぱい。リボル、リボル、最高だ」という歌声とともに両開きのドアが開き、10人ほどの生徒が入って来る(1枚目の写真)。「♪リボル、リボル、これ何だと思う? 誕生日のケーキ、持ってきた」。そして、ロウソクが一杯立ったケーキを見せる(2枚目の写真)。「これ僕に?」。「他に、誕生日の奴いるか?」。「ロウソク、吹き消せよ」。「一気だぞ」。リボルが、一度に全部吹き消すと、みんなが拍手する。リボルは、笑顔で 「みんなも食べて」と言うが(3枚目の写真)、一番にケーキを手に取ってかぶりつく。しかし、噛むにつれて顔が変わり、「どうしたんだ、不味いのか?」の声がかかった直後に、手で口を押える。すると、こんどは皆が笑い出す〔学食での捨て台詞を誰かが聞いていた〕。その声を聞いて入って来た先日の講師が 「何事だ?」と訊くと、トイレに行こうと、手で口を押えたリボルが部屋から出ようとして向かって来る。事情が分からない講師は、リボルを出させない。そこで、我慢できなくなったリボルは、カリフラワーを砕いて作ったケーキを講師に向かって吐き出す(4枚目の写真)。リボルは部屋から走って出て行き、講師は残った生徒達を睨みつける。

お昼過ぎ、リボルは迎えの車に乗ろうと 学校の玄関から外に出る。すると、背の高い友人が 「おい、日曜にはちゃんと時間通り戻ってこいよ。体育館の準備がある。僕一人で全部運ぶなんてうんざりだ」と声をかける。それに対し、リボルは 「もしかしたら、戻らないかも!」と冗談を言うが(1枚目の写真、左の矢印がリボル、右の矢印が友人)、この発言があとで問題に。リボルは、必ず週末も学校にいるので、教師の1人が 「やあ、どこに行くんだい?」と声をかける。「初めて週末に家に帰るんです。僕の誕生日を祝うため」。教師は、自転車で階段を下りながら〔あまり裕福そうには見えない〕、「お祝いか、すごいな」と言い、「ありがとう、先生」と感謝される。そこに、スウェーデン製のサーブ9-5セダンが乗り付け、リボルは走って助手席まで行き、乗り込みながら、「今日は、マデラさん」と運転手に言い(2枚目の写真)、マデラは 「やあ、リボル」と気安く返事する。車は、一旦都心を通り、郊外の高級マンションへと向かう。リボルが車を降りて玄関に歩いて行くと(3枚目の写真、矢印)、サーブを追ってきた旧式の青色バン(1980年代のメルセデス)が、離れた場所にこっそりと駐車する。

リボルが居間に入って行くと、伯父と伯母は、夫婦で来た顧客と恐らく家の設計について話し合っている最中だった。それでも、伯母は、「あら、早いのね」と言い、リボルは伯母の両方の頬にキスする。そして、伯父の前を通ると、彼は 「車はどうだった?」と訊き、リボルの 「よかった」で、両手をパチンと合わせる(1枚目の写真)。この仲良さそうなシーンだけ見ると、リボルが両親と会ったように見えてしまう。しかし、リボルが、「初めはスムースだったけど、プラハに入ると、亀みたいにゆっくりで…」と話し始めると、伯母が、「座ってて。今、打ち合わせ中なの、すぐ終わるわ」と言う。リボルは、奥の丸イスに乗っていた黒猫のザラを抱き、丸イスに座る。リボルはすぐにザラの異常に気付き、ダニがいるに違いないと、ザラをひっくり返して調べる。その度にザラがニャーと鳴き、打ち合わせの邪魔になると、伯母が嫌な顔をして何度もリボルを見る。リボルは、遂にダニを見つけ、伯母の前までザラを抱いていくと、「見て、豆粒くらいのダニだよ」と言って、ダニを見せる。伯母は 「分ったから、すぐ捨てなさい!」と叱り付けるように命じる(2枚目の写真、矢印はザラとダニ)〔「何て不衛生な家か」と思われるのを嫌った〕。リボルは、猫を抱いたままキッチンに行き、夕食に何か食べようと、小さなテーブルの上のパンを見るが塗る物がない。冷蔵庫を開けるが、中には小さなビン1本、小さな缶詰1個、皿の上にごく小さな球状のもの3個の3つがあるだけ。リボルは、缶詰を取り出すと、猫の絵が描いてある。ザラの餌だと思い、床に置いてあるザラ用の皿に少し入れるが、お腹が減っているので、缶の裏の原材料を読む。「牛肉、ゼラチン、動物性脂肪、ビタミンB、C、D、E、β-カロテン、タンパク質、カルシウム、天然フレーバー」。これなら人間が食べても大丈夫と思ったリボルは、パンを缶の中に突っ込むと(3枚目の写真、矢印は缶)、パリパリと食べる。それから、自分の部屋に行くと、「世界の創造主(Stvořitel svĕta)」というコンピュータ・ゲームを立ち上げ(4枚目の写真、矢印)、野原、木、動物、家を作っていき、完成した風景をプリントアウトし、「こんな家に住んでみたいな」とザラに話しかける。初めて週末に帰宅したというのに、金曜の夜遅くまで仕事で無視され、放っておかれるとは、何と冷たい伯父と伯母なのだろう。

翌、土曜の朝。前夜、パジャマにも着替えず、ザラを抱いたまま寝てしまったリボルが、遅刻してサーブまで走って来る。車内には、土曜なのに重要な打ち合わせがある伯父と、劇場まで行く伯母が、イライラして待っている。伯母は、ザラのことを野獣、厄介物と呼び、買ったばかりのマンションがメチャメチャだと文句を言う。次に、リボルのだらしない服装を批判し、「なぜ、私たちが あんな高い学校にお金を払ってると思うの?! 教育のためだけじゃなく、あなたに ちゃんとした行動規範を身につけてもらうためなのよ!」と叱る。「それって、どういうこと?」。「『どういう』?」。「あの… 『行動規範』って?」。「それはね、あなたの話し方、振る舞い方よ。あなたが、他の人とどのようにコミュニケーションを取り、特定の状況にどれだけ適応できるかということ」(1枚目の写真)「例えば、昨日、あなたが ダニの話を出したのは明らかに不適切だったの」。「だって、ダニがあんなに血を吸ってるのを見たでしょ? ザラすごく苦しんでたよ! それに、あの人たち、僕に挨拶すらしなかった。つまり、あの2人には行動規範が全くないってことだね」。「あなたはね、私たちの重要なビジネスを妨げたのよ。伯父さんは激怒してたわ」。怒ることしか知らない伯母は、「ミハル」と何度も伯父に呼びかけ、リボルを叱ってもらおうとするが、伯父の頭にあるのは今日の仕事〔昨日のような一軒の家ではなく、地下駐車場に関連した大きなプロジェクト〕のことだけで、「遅れないよう、地下鉄で行く」と言って途中で降りてしまう。「リボルの誕生日会、忘れないでね?」。「そうか? 何時だ?」。「午後5時よ。イットガート夫妻を招待したわ」〔誕生日会とは名ばかりで、商談の会の付け足し〕。その後、伯母が下り、リボルは運転手のマデラと一緒に、チャックの壊れたズボンの代替品を買いに行く。そして、午後5時になり、リボルの誕生日会が始まるが、参加者は ほとんどがリボルの知らない大人の男性ばかり。2人だけ来たリボルの知らない女の子のうちの1人〔黒い服〕は、「あの女(ひと)、彼のお母さんじゃないのよ」と、もう1人〔赤い服〕に話す(2枚目の写真)。「彼のお母さんじゃないなら、誰なの?」。「伯母さん。彼の両親はバイク事故で亡くなったの」。「ホントなの? いつ?」。「ずっと昔」。1人寂しく階段に座っていたリボルの所に、1人の男の子が、母親が買ったプレゼントを持ってやって来る。しかし、リボルが包みを開けると、男の子は中に入っていたコンピュータ・ゲームに夢中になり、リボルのコンピュータを占領して遊び続け、リボルに触らせようともしなかったので、リボルはしびれを切らして立ち去る(3枚目の写真)。そして、自分の部屋に行くと、すべてがバカらしくなり、仰向けになってベッドに倒れ込む(4枚目の写真、矢印)。

月曜の朝、学校に連れて行く車の前で、伯父はリボルに、「持ってなさい」と言ってお札を1枚渡そうとする。リボルは、「そんなにたくさん要りません」と言うが、伯父は 「夏休みまで2週間ある。取っておくんだ」と勧めたので(1枚目の写真)、リボルは 「ありがとう」と言って、もらったお札をズボンのポケットに入れる。それを見た伯母は、さっそく、「お財布はないの?」と問いただす。「ザラが財布で遊んでた。テラスのどこかにザラが埋めたんだと思うけど」。「まさか、犬じゃあるまいし」。「うん、そうだね」。伯母は、リボルがチャックの壊れたズボンを履いているのを見て、「新しいのはどうしたの?」と訊き、洗濯中だと訊くと、「よくまあ、そんなに早く汚せるわね」と嫌味を言うが、伯父は、「行きなさい」と、リボルを解放する。リボルが、「行ってきます」と言って、すぐ目の前に停まっているサーブの助手席まで歩いて行き、ドアを開ける前に手を振ろうとすると、2人はとっくにいなくなり、玄関に入る寸前だった〔そのくらい、リボルのことを、“お邪魔虫” だとしか思っていない〕。サーブが角をまがって消えると、青色バンがすぐ後を追って行く(2枚目の写真、矢印)。途中で、マデラは給油のためにガソリンスタンドに寄るが、リボルが 「トイレに行くのを忘れてた」と言って、車を降りる(3枚目の写真)。リボルが、トイレで小便をしていると、ドアが開く音がして足音が聞こえ、すぐ横と後ろまで来ると立ち止まったまま動かないので緊張する(4枚目の写真)。

トイレが終わったリボルは、2人の男に乱暴に掴まれ(1枚目の写真)、顔に拳銃を突き付けられ、「ちょっとでも声出してみやがれ」と脅される。誘拐犯の老人の方は、リボルのズボンのポケットから、さっき伯父が渡した1000コルナ札〔2001年7月の為替相場で3200円〕を奪い、そのまま、リボルの口を押えてトイレから出ると、すぐ横に付けたバンの後部に放り込む(2枚目の写真)。マデラは、リボルが戻って来ないので、トイレも含めてあちこち探すがどこにもいない。そこで、携帯で伯母に連絡する。一方、プラハから相当離れた田舎まで来たバンの運転席では、若者の誘拐犯が、「黙ってろ、警官には一言も言うな、金を用意しろ」と、“両親” に要求する内容を口に出している。老人の方は、「奴らを怖がらせるほど、ガキのためにたくさん払うぞ」と言う。それを聞いたリボルは、「誰が、僕なんかのために払ってくれるの?」と尋ねる。若者:「『誰が』だと? お前の親父に決まっとるだろ? 100万、200万、それとも、300万〔960万円〕か?」。「だけど… 僕の父さん、死んじゃった。母さんもだよ」。それを聞いてびっくりした若者は、リボルの上半身を運転席に引っ張り込み、「何だと?!」と怒鳴る(3枚目の写真)。「父さんと母さんはもう亡くなった。僕の伯母さんと伯父さんが、僕を育ててる」。老人:「誰が育ててようが構わん。あのマンションや、車や、財産は誰のだ?」。「みんな、伯父さんと伯母さんのだよ」。それを聞いた若者は、リボルを車の後ろに突き放す。2人は、車から出て10mほど先まで行き、これからどうするか話し合う。リボルは、その隙に逃げようと、運転席まで何とか出て来るが、バランスを崩してハンドルにぶつかり、クラクションを鳴らしてしまう。2人が走って戻って来たので、リボルは後ろに戻るが、逃げようとしたことで乱暴に殴られる。

リボルが行方不明になってから何の情報も入って来ないので、マンションでは、“リボルがどうなったか心配などせず、ただ行方を捜しているだけ” の伯母が、遂に彼女らしい発言をする。「彼は逃げたのよ…」。「いったいどこへ?」。「分からない」。「なぜだ?!」。「選択肢はたくさんあるわ。例えば、彼は何か良くないことをして、そのことを私たちに話すのが怖くなった」(1枚目の写真)〔孤児になった甥が行方不明になっても心配一つせず、そこに悪意しか想定しない “偏見に満ちた伯母” の悪辣さがよく分かる〕。一方のバンの中での会話。「こいつ、あいつらのガキじゃないから、たくさん金をよこさんと思うか?」。「ああ、義弟だからな。100万がいいトコだろう」。「たいした金じゃないな」。「しばらく待ってから、ガキとは二度と会えなくなると言って、あいつらを脅すんだ。ガキを毎日ぶちのめせば、あいつらも驚いて腰を抜かすだろう」(2枚目の写真、矢印は手錠)。ここで、再び、マンション。「何か見つけたか?」。「昨日、劇場に行った時につけてったブレスレットが見つからないの」(3枚目の写真、矢印はプレスレットの箱)「もしかしたら、あの子が… 警察に電話した方がいいかも」〔最初から、リボルを悪者扱いしている〕。

リボルは、田舎の一軒家に連れて行かれ、汚い部屋に入れられ、ドアの入口に重い棚が置かれ、逃走できないようにされる(1枚目の写真、矢印)。それにもかかわらず、部屋の中では右手の手錠がかけられ、動くこともままならない(2枚目の写真、矢印)。一方、伯母はリボルの学校に行き、「最近、リボルの様子が少し変だと感じたことはありますか?」と、同じ部屋だった生徒2人に質問する。「彼、時々、物を売ってたよ」。「どんな物?」。「ナイフを売ってくれたんだ。クリストフは、コンピュータ・ゲームを買ってた」。「お金が要るって言ってたの?」。「うん」。ここで、教師が、「何のためだか知ってるか? リボルが、家を出てこうと思ってるってサジェストしたことあるか?」〔伯母が、最初から “家出” を前提に質問に来たので、相手の思考も捩じられてしまっている〕。その時、金曜にリボルが学校を出て行く時に、「もしかしたら、戻らないかも!」と冗談を言ったのを聞いた方の生徒が、「金曜に帰って行く時、彼、戻らないかもしれないって言ってた」(3枚目の写真)と発言する。それを聞いた最初の生徒が、「彼、伯母と伯父は、自分のためにぜんぜん時間を割いてくれないって言ってた。いつも仕事ばかりだって」と、事実を述べる。しかし、伯母は、自分に都合の悪い話は無視し、教師に、リボルが学校でどんなだったかを尋ねる。教師は、「彼は問題を抱えていたと思います」と答える〔何れにせよ、伯母が、リボルが “家出” したという思い込みに対し、それが自分の落ち度のせいだと認めることを拒否し、あくまでリボルが “悪い” と決めつけようとしていたことが後で判明する〕。

部屋に閉じ込められたリボルは、何とか手錠を外そうと考え、ベルトのバックルのピンを使って頑張る(1枚目の写真、左の矢印はピン、右の矢印は手錠)。運良く、手錠は外れ、リボルは手錠の部屋とつながった他の数部屋にも自由に行けるようになる。隣の部屋には汚水を流す原始的な装置があり、その先のパイプは、床の中に入っている。そして、そのすぐ横には、1m×1mほどの木の蓋がある。その先が、どうなっているのだろうかと、窓の外を見ると、短い丸太を通路のように並べた先に、四角い鉄の蓋が見える(2枚目の写真、矢印は鉄の蓋)。彼は、今いる部屋の木の蓋が、天井に丸太を並べた地下通路を経て、鉄の蓋に通じているに違いないと確信する(2枚目の写真の点線)。そこで、木の蓋の上に落ちている木片を拾い(3枚目の写真、リボルの背後に映っているのが、汚水を流す原始的な装置とパイプ)、蓋を開けると、思い切って中に飛び降りる。

中には、10cmくらいの深さで汚水(糞尿、もしくは、尿)が貯まっていて凄まじい臭いだが、リボルは何としても逃げたいので、我慢して一歩一歩進む(1枚目の写真)。そして、終点にある重い鉄の蓋を、何度も試みて開けることに成功する(2枚目の写真)。しかし、鉄の蓋が、反対側に落ちた時に大きな音がしたので、家の中で眠っていた誘拐犯のうち、若者が目を覚ます。幸い、どこで何の音がしたのか分からないので、老人を起こしたりしているうちに、リボルは農家の中庭から その向こうの野原、そして、さらにその先の森に向かって走って行く(3枚目の写真)。

森に入ったリボルの最初のシーンは、渓流に入って対岸に行くところ(1枚目の写真)。このお陰で、汚水で汚れた靴と、ズボンの下部が洗われる。次に、誘拐犯2人が、リボル降りて行った四角い穴を見下ろす場面が入り、2人は農家から出て野原に出る。野原の左右を見てもリボルの姿がないので、正面に見える森に逃げたと思い、森に入り、リボルが渡った渓流に入って行く(2枚目の写真)。リボルは、藪の向こうから2人が追いかけて来たのを知ると、太い倒木の陰にぴったり寄り添って隠れ(3枚目の写真)、2人をやり過ごす。

次の場面では、いきなり、1両だけの旧式のディーゼルカーが、ほとんど何もない駅の前に停まり、乗客が数名待っているのが映る(1枚目の写真)。この3名が乗ると、ディーゼルカーはすぐに発車する。すると、車両が動いて見えなくなると同時に、草の斜面を駆け下りて来るリボルが映る。リボルは、ゆっくりと走るディーゼルカーの運転手に向かって、全力で走りながら、「お願い、停まって!」と、何度も叫ぶ(2枚目の写真)。その姿を見た親切な運転手は、電車を停めてくれる。ここで、場面は農家に戻り、「くそっ、なんでだよ! 金も要求しとらんのに、こんなザマかよ」。「あのガキ、俺たちの顔 覚えるぞ。警察に行って通報する気だ」と言いながら、荷物をまとめてバンに入れて立ち去る〔これで、リボルが誘拐されたという “証拠” はなくなってしまう〕。ディーゼルカーに乗ったリボルは、自分が如何に汚いか知っているので、まず、一番後ろにある洗面所に行き(3枚目の写真)、固まったままの鼻血を洗ったり、ある程度服装を整えたりして、空いていた一番後ろの席に座るが、体やシャツやズボンに染み付いた臭いや、汚れが全面に付いた白いシャツに、前に座っていた男性は嫌な顔をする。しかし、そんなことにはお構いなく、疲れてリボルは、窓に腕と頭を乗せて眠ってしまう(4枚目の写真)。

リボルが目を覚ますと、ディーゼルカーは停まっていて、車内には誰もおらず、なぜかリボルの靴と靴下がなくなり、裸足になっていた〔このシーン、理由はさっぱり分からない。①なぜ、運転手はリボルを残して下車したのか? ②なぜ、裸足なのか?〕。リボルがディーゼルカーのドアから外を覗くと、駅舎には「スカルスコ(Skalsko)」と掲示され、その前に山羊が1頭つながれている(1枚目の写真)。この駅舎は、プラハの中心から約45km東北東に実在する現役の駅舎で、2枚目に、Google street viewの写真を示す。駅舎の端に脚が見えたので、リボルは 「今日は!」と叫び、それでも反応がないので、もっと大きな声で「今日は!!」と叫ぶ。すると、老人〔駅員ではなく山羊の世話をしている〕が顔を出したので、「このディーゼルカー、次はどこに行くのか教えてもらえません?!」と、叫ぶように訊く。「どこにも行かん。ここが終点じゃ!」。リボルは、ディーゼルカーから下りると、老人の前まで行き、「ここに、電話ありますか?」と訊く。「線路づたいにセドリツェ〔架空の町〕まで行くがいい。そこに郵便局がある」と教える。そこで、リボルが教えられた方角に歩き始めると(3枚目の写真)、「今はちょうど昼休みじゃ」と老人が言ったので、リボルは老人の所に戻り、「できるだけ早く、電話まで行かないと」と助けを求める。すると老人は、「そうか。ならパネンコの家に行けばいい」と言う。「その家、どこにあるんです?」。老人は、さっきとは反対側を指して、「線路づたいに次の駅まで行くんじゃ」と教える。「だって、あなた、ここが終点だって言ったじゃない」(4枚目の写真)。「今は廃止になって、線路は撤去されたんじゃ」〔実際は、廃線にはなってない〕。

リボルは、暑いのでYシャツを脱ぎ、草の生えた線路の上を歩いて行く〔廃線なのは分かるが、レールが残っているので、「線路は撤去」の意味が分からない〕。しばらく歩くと目の前が開け、使われなくなった駅が見えてくる(2枚目の写真)。実は、このスドミェル駅は、先ほどのスカルスコ駅の北西1km〔線路沿いの距離〕にあり、現役の駅舎内にはスドミェル鉄道博物館(Železniční muzeum Sudoměř)もある。https://www.mladoboleslavsko.eu/dr-cs/16107-zeleznicni-muzeum-sudo mer.html というサイトにある 2枚目の写真とほぼ同じ場所から撮った写真を 3枚目に示す。線路は現役なので 草は生えていない。映画の撮影に当たり、廃線のように見せかけたと思われるが、列車は定時運行しているので、どうやって撮影したのだろう? リボルはYシャツを着ると、パネンコの家の前まで行き、「今日は!」と大きな声で呼びかける(4枚目の写真)。https://www.idnes.cz/cestovani/po-cesku/ muzea-vonici-parou-sudomer-u-mlade-boleslavi-dreziny.A221117_190804_po-cesku_vrja というサイトにある 4枚目の写真とほぼ同じ場所から撮った写真を 5枚目に示す〔現役の駅なので、先ほどのスカルスコ駅同様、紺色の板に白字で駅名(Sudoměř)が表示されている〕。

玄関から いくら声をかけても返事がないので、リボルは家の中に入って行き、「誰かいますか?!」と大きな声で訊くが(1枚目の写真)、やはり反応はなく、TVの音声が聞こえるだけ。リボルが偶然キッチンに入ると、そこには美味しそうな焼き菓子がオーブンの上に置かれた角皿の中に入っていたので、近くにあったナイフで切り取り、立ったまま手づかみで食べ始める。すると、すぐ横にあったTVから、「リボル」という言葉が耳に飛び込んで来たので、びっくりしてTVを見る(2枚目の写真、矢印はお菓子)。すると、そこには伯母が映っていて、司会の女性が伯母に 「昨日、何が起きたのか具体的に教えていただけますか?」と訊く。伯母は 「土曜日に リボルの13歳の誕生日を祝いました。彼は多くの友人を招待し〔どう見ても嘘〕、夕方からずっと遊んでいました。素敵なプレゼントももらいました〔伯父と伯母は何も渡していない。男の子がゲームのDVDを持って来て、自分で遊んだだけ〕。翌日、彼は家出をしました。寄宿学校に向かう途中、ガソリンスタンドでトイレに行きたいと言って車から降りると、二度と戻って来ませんでした」。「家出したのではなく、もし彼に何かあったらどうされます?」。「私は、寄宿学校に行き、彼の学友と話をしました。最近、彼は持ち物を売っていたようです。恐らく、家出を計画し、そのためのお金が必要だったのでしょう」。「彼は、お宅から、何かを持ち出しましたか?」。「ブレスレットが1つ見つからないのです」(3枚目の写真)。その時、リボルに何事かが起き、食べていたお菓子が床に落ちる。

映画は暗転し、次に映像が写った時には、指が無理矢理リボルの目を開けている。そして、次の映像では、10代の女性(イトカ)の顔に、ピンボケから焦点が合う。リボルは、一旦気絶し、意識が戻ったように見える。すると、イトカが 「動いたら、頭を殴るわよ」と脅す。カメラが引くと、イトカの右隣に、リボルと同年か少しだけ年上の少年(イトカの弟のフィリップ)が写り、「こいつ、ここで何探してたんだろう?」と姉に訊く(1枚目の写真)。「お金でしょ? 他に何がある?」。リボルが、弱々しい声で、「僕、何かを盗むつもりなんか なかった」と言う。イトカは、床に落ちたお菓子を リボルの目の前まで持って行くと、「じゃあ、これ何なの?」と訊く。リボルが再び気を失うと、イトカは 「寝るんじゃないよ! どこから来たの? どうしてここに来たの?」と訊くが、反応はない。「強く殴り過ぎたんだよ、姉さん」。「あんたが殴りゃよかったんだ」。そして、さらに、「これって、あの子じゃない? ほら、ヴィソチナに行った時に読んだ」。フィリップは、さっそく新聞を持って来て、顔が載っている紙面をリボルに見せ、「これ、君だろ?」と訊く(2枚目の写真、矢印)。イトカ:「あんたよ。そうに決まってる」。そう言うと、新聞をフィリップから取り上げて、記事を読み上げる。「金曜日、チェスキー・ブジョルティの孤児院からツェルネ・スカラの療養所へバスで向かう途中、12歳のP. グスタは、誰にも気づかれずにバスから逃げ出した。友人や教師によると、グスタは重症肝炎に苦しんで “うつ状態” にあり、何度も自殺したいと口にしていたという。逃亡者は捜索中である」。そして、新聞をリボルの顔の横に持って行く(3枚目の写真)。この映像で、リボルがイトカに殴り倒され、床に倒れていたことが初めて分かる。記事の内容に同情したフィリップが、「グスタ、何とか、乗り越えないと」と言うと、リボルは 「僕はグスタじゃない」と反論するが、イトカは 「心配しないで。誰にも言わない。私たち、孤児院がどんなトコか知ってるから、グスタ」と慰める。「僕はグスタじゃない」。フィリップ:「ねえ、どうして肝炎だとうつ病で苦しむの?」。「知らないよ。肝炎になったことないから」。イトカ:「なったじゃないの。12歳で」。「僕、13歳だ」。フィリップ:「分ったよ、グスタ。詮索なんかしないから。僕たち、秘密を守り、君の情報は漏らさない。干し草置き場に隠してあげる。誰にも見つからないよ」。イトカ:「食べ物も、こっそり持って来てあげる」。フィリップ:「一つだけ約束しろよ、グスタ。自殺願望なんかクソくらえだぞ」。「僕はグスタじゃない」。

グスタにされてしまったリボルが納屋の2階の干し草の上に座っていると(1枚目の写真)、車のクラクションが聞こたので、すぐに窓から覗く。車種の特定はできなかったが、1960年のビュイック・ルセイバーに似たテールランプや、同じ年代のオースティンに似たヘッドライトから、相当古い車であることは確か。車が着くとフィリップとイトカが走って迎えに行き、運転席から男性が、助手席から女性が2人下りる(2枚目の写真)。次のシーンでは、2階に上がって来たフィリップが、干し草の山に向かって〔リボルは山の中にもぐっている〕、「グスタ」と呼びかける。「僕はグスタじゃない」。そう言うと、リボルが干し草を掻き分けて姿を見せる。すると、2階の縁に立ったフィリップが赤い液体の入った大きなペットボトルと、にんじん2本、イトカが紙で包んだサンドイッチを見せる。そして、「アイスクリームも持って来ようとしたんだけど、ブランカが冷凍バッグをちゃんと閉めなかったの」と話す。お腹が空いたリボルは、真っ先にサンドイッチを手に取ると、「ブランカって誰?」と訊く。「僕たちの母さんみたいな女(ひと)」。「『みたいな』って何だよ? だって、母さんて、いるか いないかのどっちかだろ?」(3枚目の写真、矢印)。そう言ってリボルがサンドイッチに噛みついた瞬間、イトカがリボルの腕を掴んでサンドイッチを口から引き離し、「黄疸があるのに、ソーセージ3本も食べていいの?」と訊く。リボルは、最初に噛みついた分のサンドイッチを噛みながら、「黄疸なんかないよ」と言って、サンドイッチを取り返す。そして、「君と、君の母さん、どうなってるの?」とフィリップに訊く。「ホント言うと、僕たちには母さんいないんだ。どんな女(ひと)だったかも知らない。ブランカとエリックが僕たちを孤児院から連れ出してくれたんだ」。窓から覗きながら、「あの赤毛の子も養子なの?」。「マルセラはホントの子。お医者さんは、ブランカに二度目の出産はダメだって。だから、ブランカとエリックはよく孤児院に行くんだ」。会話は長々と続くが、あと大事な部分は、会話の最後。リボル:「学校に行かなきゃいけないんじゃないの?」。イトカ:「私たちの体にはバクテリアがいっぱい。だから、どの親も、私たちが自分の子供に近寄らないよう必死なの」。フィリップ:「だから、学校に入れてくれないんだ。たとえ ひざまずいて懇願しても」。

リボルは、小便がしたくても、1階に馬がいるので怖くて我慢していたが、フィリップにもらったニンジンを丸ごと1本馬に食べさせ、その隙に外に抜け出すと、用を済ます。ホッとして立っていると、笑い声が聞こえてくるので、素足の声のする方に行き こっそり覗いてみる(1枚目の写真)。そこでは、家の前に置かれたテーブルで一家5人が食べながら話している。フィリップ:「耳があるのに聴こえない、煙を出すけどパイプを持ってない。それ何だ? 当てて」。イトカ:「熱湯の入った桶」。エリック:「違うな。桶には耳なんかない。あるのは取っ手だよ」。ブランカ:「ポデスタットさん。耳はあるけど、ほとんど聴こえない。それに、いつもタバコをくわえて歩いてる」〔“なぞなぞ” らしくない問題と答え〕。エリック:「ブランカには敵(かな)わないな」。ここでエリックが、「バクテリアの具合は?」と訊く。イトカ:「いいわよ。ただ、みんな、私たちが学校に行かないことを気にしてるだけ」。ブランカ:「ねえ、あれは あなたのバクテリアだったの? それともフィリップが残りのパイとシュニッツェルを全部食べちゃったの?」〔リボルに持っていったから、食べ物がなくなった?〕。イトカ:「私も食べたわ」。フィリップ:「僕らのバクテリアは、山のような食べ物だって喰い尽くすんだ!」。ブランカ:「明日の朝食には、少なくとも卵が3個必要ね」。イトカ:「トーストもね」。ここで、リボルがうっかり音を立て、エリックはただちに立ち上がると、厳しい声で 「誰だ!」言い、あたりを見回す。リボルはこっそり戻って行く。

翌朝、イトカとフィリップがトーストと卵とココアを持ってやって来る(1枚目の写真、矢印はリボル)。フィリップは、「聞けよ、グスタ… 僕が何を思いついたか分かるか? 僕たちと一緒にここにいたらどうだ? ブランカはいつも、少なくとも5人 子供が欲しいって言ってる。だけど、今は3人しかいない。もし、ブランカとエリックが君を養子にしたら、僕の弟になるよ」。イトカ:「私の弟にもね」。フィリップ:「すごく楽しいと思わないか?」(2枚目の写真)「僕、ずっと弟が欲しかったんだ。君はどうだい、グスタ。そしたら、何でも一緒にできるぞ」。「僕はグスタじゃない!!」〔5度目〕「それに、行かなきゃいけないトコがある!!」。「何を怒ってるんだ?」。「何にも!! 僕は誰にも迷惑かけてない! 何も悪いことしてない!」(3枚目の写真)「何も盗んでない! 簡単に証明できる!」。イトカ:「何、心配してるの? 誰かに、何かしたって言われたの?」。「僕、簡単に戻れるよ! ホントに簡単に! 僕がどんな目に遭ったか話すだけでいいんだ。それで戻れる! きっと僕を信じてくれる! だって僕は何も…」。ここまで言った時、2人から逃れるようにバックしていたリボルのお尻は2階の端まで達していた(4枚目の写真)。リボルはバランスを崩し、そのまま落下する(矢印の方向)。そして、今まで起きたことのすべてを悪い方に歪曲した悪夢を見る〔例えば、クラスメイトが誕生日に持って来たケーキの皿に載っていたのは猫のザラだった〕。

リボルが意識を取り戻すと、病院の看護婦が 「目を覚ましました」と、エリックとブランカに知らせる。2人はベッドに寄っていき、エリックが 「やあ、グスタ。エリックだ」と声をかけ、ブランカも 「ブランカよ」と声をかける。看護婦は、「頬の傷はそれほど深くありません。数日で治ります。でも、肩の打撲と足の骨折は治るのに時間がかかります」と説明する(1枚目の写真、矢印は左頬の傷と、左脚のギブス)〔頬の傷自体は治っても、傷の痕はギブスが取れた後まで残る〕。そこに、グスタの資料を手に持った白衣を着た警官がやって来て、「名前を言いなさい」と声をかけるが、リボルは頬の傷のため声が出ない。そこで、警官は、資料を見ながらエリックに向かって、「ペシェク・グスタ、1989年11月3日生まれです。彼は、3週間以上前に孤児院から逃げ出しました。我々は、彼を見つけられるとは思っていませんでした。身元確認のため 証人が一人必要です。サインして下さい」と言って書類とペンを渡す。エリックは、書類にサインする(2枚目の写真)。エリックは、孤児院の住所と電話を訊く。ブランカは、リボルの近く行き、右手を彼の頭の下に入れて頭を持ち上げて額にキスしようとする。すると、リボルは再び気を失い、さっきまでとは全く違う夢を見る〔その中で、スドミェル駅の前を走って行く列車に乗っている夢を見る ⇒ レールは駅の紹介をした節の時に使ったネットの写真と同じように整備されていて、草など生えていない〕。リボルが目を覚ますと、ブランカの笑顔がすぐ目の前に迫り〔白衣を着ていないので、別の日〕、「今日は、グスタ。覚えてる? 私 ブランカよ」と声をかける(3枚目の写真)。リボルは、小さな声で、「初めまして」と丁寧に挨拶する。ブランカは、リボルと握手しながら、後ろに座った3人の子に向かって、「まあ! 『初めまして』なんて、突然、礼儀正しくなったのね」と言う。そして、「気分はどう?」とリボルに訊きながら、以前フィリップが持って来た “赤い液体の入った大きなペットボトル” をイトカから受け取ると、「これは 自家製のレッドカラント〔赤すぐり〕ジュースよ。飲めば飲むほど、早く良くなるわ」と説明する。

すると、そこにいきなり看護婦が入って来ると、リボルのベッドを引っ張って部屋から出そうとする。何の説明もないので、びっくりしたブランカが、「どこに連れて行くんですか?」と訊くと、「感染症病棟へ。猩紅熱です」と言う〔5~15歳の子供に多く見られる感染症(高熱、咽頭痛、体全体に広がる紅色の発疹)/飛沫感染か接触感染だが、どこで感染したのだろう?(対象者がいない)/抗菌薬の投与で、数日〜1週間程度で症状は改善する〕。そして、看護婦がベッドの足側を引っ張り、ブランカがベッドの頭側を押して、廊下を感染症病棟へと向かう(1枚目の写真)。ブランカは、「怖がらないで。ここに長くは置いておかないから」と安心させようとする。ブランカの横に来て、一緒にベッドを押し始めたフィリップは、「家にベッドを用意したよ。それとも、孤児院に戻りたい? あんな狂った所に戻りたくないだろ、グスタ?」と話しかける。リボルは、「僕、戻りたくない。一緒にいさせてくれたら すごく嬉しい。少しの間でも!」と叫ぶように言って、病棟の2人部屋に入れられる(2枚目の写真)〔飛沫感染する病気なのに、こんなに大声で話させて 病院は平気なのだろうか?〕。次のシーンでは、もう1つのベッドの患者が、ベッドに腰かけて携帯電話で長々と話している。そして、ベッドに携帯電話を置いて部屋から出て行ってしまう。リボルは、さっそくベッドから出ると、携帯電話を使って寄宿学校内の “生徒用の公衆電話” に電話する。近くにいた生徒が受話器を取ったので、リボルは、同室のドミニクに代ってもらう。ドミニクが電話に出ると、リボルは、「何がどうなってるか知りたいんだ」「伯父さんはどう?」「彼、何て言った?」「何だって? 僕のナイトテーブル調べた? 他には?」(2枚目の写真)「警察は? 来たの?」と訊く〔ドミニクが何と答えたのかは分からない〕。ここで、カメラはドミニクに切り替わる。「今度で2回目だ」「心配するなよ、何も言わないから。そもそも、僕は何も知らないし」。そして、会話は、警官がドミニクに質問に来たことで停止される。この一方的な会話からは、何が話されたか全く分からないが、後でリボルがかけた電話からすると、“リボルはブレスレットを盗んで家出した” と誤解されていることは、教えてもらったらしい。

猩紅熱で他人を感染させる恐れがなくなった段階で〔左の頬の傷も、ガーゼは不要となった〕、リボルはおんぼろ車で、パネンコ家に向かう(1枚目の写真)。家に着いた時のシーンはなく、次のシーンでは、リボルが、ブランカが外で庭仕事をしているのを見て(2枚目の写真)、こっそりと電話機のところまで行き、伯父のマンションまで直接電話をかける(3枚目の写真)。しかし、出たのは留守録の声だったので、「僕だよ。僕、家出なんかしてないから電話したんだ。僕、悪いことなんか何もしてない。ブレスレットのことだって何も知らない。あの時、ガソリンスタンドでトイレに行ったら、彼らが…」。その時、ブランカが家の中に戻って来た音がしたので、リボルは急いで受話器を置き、片足ギブスで歩ける最大速度で隣の部屋の長椅子に座る。間に合って、部屋に入って来たブランカは、何も疑わず、「ディルスープ〔ディル・ピクルス(きゅうりをディルというハーブとスパイスで香りづけして漬け込んだ洋風のピクルス)の風味がたっぷりのベーコンとポテトのスープ〕食べる?」と訊く。そして、「何が嫌い?」とも。「カリフラワー」。そこに、イトカが、イボガエルを持ってやって来ると、「手で取る? それともグラスに入れようか?」と訊く。そんな気持ちの悪いもの触るのも嫌なので、ダブダブの厚手のシャツで受け取ると、床に落とす。イトカが、また変なものを持って来ると困るので、「カエルもダメだからね」と予防線を張る。「ネズミはどう? 試したら?」。一連の話を聞いたブランカは、「馬、猫、犬、鳥、ハリネズミ〔可愛いので人気のあるペット〕は飼ってもいいわ。ネズミ、カエル、ヘビはダメ。分かった?」と常識的なことを言ってくれる〔それが規則なら、2年もここで暮らしたイトカが勧めたのだろう?〕。

次の機会に、リボルが伯父のマンションに電話をかけると、今度は本人につながる。「リボル! 君は、一体何を考えてるんだ? どこにいる? 戯れ言(ざれごと)なんか聞きたくない。いいか、黙って私の言うことを聞け。私は君とのすべての関係を断った!」(1枚目の写真)「いいか。ちょっとした悪戯なら許してやった。だが、君が私たちから盗み、家出をし、さらには精神的に脅迫できると思い込んだことを、私は絶対に許さん。私は説明を待っている。本当で、真面目な、馬鹿げた作り話じゃない説明を!」。このひどい言葉の次に、今度は伯母が話す。「リボル、どこにいるの? 警察はあなたを指名手配のリストに載せたわ。家出したことだけではなく、ブレスレットのこともあるから。あなたは、私がそんなことはしないだろうと思ったかもしれない。でも、当然話すべきだったわね。あなたにまだ良心があるのか、私に分かるはずがないでしょ! こんな風に騙されるなんて思いもしなかったわ! これほど面倒見てあげたのに! リボル! リボル、聞いてるの? リボル、返事なさい!」。最後は、この2人の誹謗に対するリボルの怒り。「僕は、見つからないぞ! 絶対に! 隠れてやる! それに、僕は バカげたブレスレットなんか盗んでないぞ! あんた達なんか大嫌いだ!」(2・3枚目の写真、矢印は涙ではなく傷跡)。それだけ言うと、泣きながら、くず折れるように床に座り込み(4枚目の写真)、さらに泣き続ける〔これほど唾棄すべき夫婦は、映画の中でも見たことがない〕。

ある日の晩、リボルがソファに寝転がっていると、エリックが入って来て、「ブジョルティに行って来たんだ」と話しかける。「電話で話したら、君の孤児院の院長から来てくれって言われて」(1枚目の写真)。リボルは、「打ち明けたかったの… 僕、あなたに嘘なんか付きたくなかった… でも、みんなが僕のこと、「グスタ、グスタ」と呼び続けるから…」(2枚目の写真)「それで… 僕、思ったんだ… もうどっちだっていいや… このままでいよう… もうちょっと、ここにいたいから… もうちょっと…」と、エリックに理解できないことをつぶやく。エリックは、「私は、君の校長先生と保護責任者の前で、一定期間、君に対して全責任を負うという誓約書に署名したんだ」と、孤児院で何をしたかを話す。「『一定期間』って、どういうこと?」。「君のケガが治るまで」。エリックは、さらに、「君の孤児院の院長って、変わった女性だね。私に、『本当に、あんな神経質で愚痴ばかり言う泣き虫を、家に引き取りたいと思うのですか?』なんて訊いたんだぞ」と言うと(3枚目の写真)、一旦 席を立ち、戻って来て、「君の持ち物が入ってる」と、リボルにバッグを渡す。「それから、君の友だちに、『魔女〔院長〕がまた残酷になった』って話して欲しいって頼まれた。別の子は、『君が溺死してなくてよかった』と伝えて欲しいと言ってた」。

翌日、家の外にバッグを持ち出したリボルは、壇の上に腰かけて中を見てみる。一番下には、グスタの日記が入っていた。そこには、院長がグスタに向かって命じている絵図が、台詞付きで描いてある。最初の絵では、「もうシーツを3枚もオシッコで汚したから、罰としてオムツで寝なさい!」。次の絵では、院長がたくさんの靴を指して、「夜までに鏡のようにピカピカになさい!」。3つ目の絵には、「排便するには遅過ぎるし体に悪いから、夕食など食べずに寝なさい!」〔如何にひどい孤児院だったかが分かる〕。そして、最後の絵には、これまでとは逆に、グスタが院長に向かって、「お前は終わりだ」と怒鳴る姿が描かれている(1枚目の写真) 。すると、後ろから忍び足で近づいたマルセラが、上から小石を落としたので、リボルは日記を閉じる。マルセラは、「そのノート、何が書いてあるの?」と訊きながら、壇から地面に飛び降りる。「秘密だよ」。「誰の?」。「1人の子の。彼は、戻って来るまで、このノートを置いて行ったんだ」。「彼、どこに行ったの?」。「言わないよ」。「彼、いつ戻ってくるの?」。「彼が戻ったら、僕は出て行くんだ」(2枚目の写真)。リボルは話題を変えたくなったので、マルセラが壇の上に残していった本を見て、「何 読んでるの?」と訊く。「犬について。犬が、どう行動し、如何に賢いか」。「猫も賢いよ。特に、ロシアンブルー、僕の猫は」(3枚目の写真、マルセラはリボルのギブスに落書きをしている)。「あんたの猫? 孤児院で猫が持てるの?」。「うん」。「どうして犬が嫌いなの?」。「嫌いだなんて言ってないよ。僕、犬がずっと欲しかったんだ。小さい頃、飼っててね、Pan〔チェコ語では食べるパンではなく、ミスターという意味〕って名だった」。

マルセラがいなくなった後、リボルはフィリップと一緒に馬の世話をしている。フィリップは、マルセラの誕生日がもうすぐで、エリックが地元のオーケストラを誕生日に招待したと話す。そして、イトカとフィリップの姉弟は、言葉の真似ができるコクマルガラス〔烏〕を誕生日のプレゼントに買ったとも。それを聞いたリボルは、「僕、何をあげたらいいのかな?」と訊く。「彼女、何かもらえるなんて期待してないよ。君がお金持ってないこと知ってるから」(1枚目の写真)。リボルはフィリップが買うかもしれないと思って、バックル付きの革ベルトを見せる。「どこで手に入れた?」。「もらったんだ」。「孤児院じゃ、そんなベルト配らないよ」。「クリスマスに来たボランティアがくれたんだ」。「400か500コルナ〔1280~1600円〕で売れるかも」。「買わない?」。「正気か?」。次は、室内のシーン。リボルがかなり汚れたギブスと、台に付いた両側の木の棒を 透明な粘着テープで固定していると、そこにブランカが半ズボンを持ってきて、「新品同様よ」と言って見せる(2枚目の写真)。「ギズスの上からは履けないから、外すまで待たないとね」。それを聞いたリボルは、“ケガ治るまで” の期限が近づいたと悟り、急に元気がなくなって泣き始める。心配したブランカは 「どうしたの?」と訊く。「何でもない」。「なら、なぜ泣いてるの?」。「ずっと、ここにいたかったから」(3枚目の写真)。

リボルは、エリックと一緒に病院に行き、ギブスを外してもらい、少しびっこを引きながら車の所まで戻って来る。リボルを助手席に乗せたおんぼろ車は、途中、森の中の道で雷雨に遭い、雨が窓に叩き付ける。そんな時、エリックは、「ここで車を停めよう。話し合いたい」と言い出し、車を道の端に寄せる。エリックは、あれからもう一度孤児院を訪ねたらしく、院長と子供たちから聞いたことを話す(1枚目の写真)。①グスタは一度自殺を図った〔前回、別の子が 『君が溺死してなくてよかった』と言ったのは、2度目の自殺を心配していた(ということは、最初の自殺未遂も溺死しようとした)〕、②魔女〔院長〕は、常にグスタに文句を言い、彼を嫌い、それを本人に隠すことすらしなかった、③イトカとフィリップがグスタを見つけたのは、彼が孤児院から逃亡して1ヶ月経ってからだった。そして、エリックは、「いいかい。私は、君がどこへ行こうとしていたのか、あるいは、なぜ(自殺すると)脅したことを実行しなかったのか、聞こうとは思わない。代わりに、一つだけ質問させて欲しい。君の本当の気持ちを知りたいから」と言う。「何が聞きたかったのですか?」。「君は、人生を楽しみたいという気持ちを見つけられると思うか?」。訊き方が悪かったと思ったエリックは、少し違った表現で訊き直す。「君は、もし私たちと一緒に暮らしたら、そうした願望を自分自身で見つけられると思うか?」(2枚目の写真)。リボルは、「どれくらい一緒なの? 休暇中ずっと?」と訊く。「人は、2週間や、たった一度の休暇で親族になれるわけじゃない。これからずっと、という意味だ」。それを聞いたリボルは、窓の方を向いて、エリックには聞こえないように、「僕、グスタじゃないけど、そうしたい」とつぶやく。そして、今度は、笑顔でエリックを見て、「僕そうしたい! あなたたちと一緒にいたい!」と喜んで言う(3枚目の写真)。そして、車の中で2人は歓声を上げる。

エリックは、クラクションを何度も鳴らしながら家に近づいて行き、それを聞いたフィリップ、イトカ、ブランカが家から走って出て来る。そして、停まった車の前に立つと、じっとエリックの顔を見る。エリックが笑顔で頷くと、フィリップは両手を上げて 「やった!」と叫ぶ。車から出たリボルの頬にブランカが心を込めてキスする(1枚目の写真)。イトカがリボル用に持って来た櫛で、彼の頭毛を梳かしていると、マルセラがボーダーコリーを抱いて来て、「この子に、どんな名って訊いたら、パンって言ったわ」と言ってリボルに贈る(2枚目の写真)〔プラハの冷淡な伯父伯母と違い、何と親切な家族なのだろう〕。ここでエリックが、「休日のご馳走はどこだい?」と訊き、みんなは玄関に向かって走って行く。まだうまく歩けないリボルが犬を抱いたままゆっくり玄関に歩いて行くと、玄関の両脇に3人と2人が並んで立ち、リボルを迎え入れる(3枚目の写真、矢印)。食事のシーンはないが、そのあと、干し草置き場の中で、リボルのピアノに合わせて、みんなが楽しそうに歌う(4枚目の写真、矢印)。

そこからは、非常に短いシーンを並べて、リボルの幸せな生活が紹介される。最初は、子供達4人がレッドカラントの実で遊ぶシーン。まず、フィリップがイトカの頬を、レッドカラント・ゼリーを擦り付けて真っ赤にし、次に、イトカがリボルの頬に擦り付け(1枚目の写真)、その次は、マルセラがリボルの頬のレッドカラントを舐め(2枚目の写真)〔あるいはキスし〕、最後に、リボルがマルセラの頬にレッドカラントを付ける。2番目のシーンは、フィリップが長い棒を使って、ゆっくりと円を描いて歩ませる馬に、リボルが初心者らしく跨っている(3枚目の写真)。3番目のシーンは、家の前のレールの上を、フィリップとリボルが歩いて速さを競う(4枚目の写真)〔脚が悪いリボルは、バランスが悪くて遅れるが、ブランカを含めた女性3人は、リボルに声援を送る〕。

4番目のシーンでは、まず、マルセラの顔が映る。そして、彼女は、意を決したように、着ていたシャツを脱ぐ(1枚目の写真)。それを横目でびっくりして見ているリボルの顔が映ると(2枚目の写真)、次は、池の前に立っている2人の後ろ姿が映る。マルセラは全裸で、リボルはパンツだけ(3枚目の写真)。リボルも意を決してパンツを脱ぎ、2人は全裸で並ぶ(4枚目の写真)。そして、一緒に池の中に入って行く〔マルセラは、犬をあげたり、レッドカラントでキスしたり、こんなきわどい行動までするので、リボルが好きに違いない〕。

5番目のシーンは、リボルとフィリップが、それぞれ馬に乗って森の中に入って行き、馬を木に繋ぐと、焚き火の近くで横になり、何か分からないものを棒に刺して火で焼いている。6番目は、円盤状の木の板に、リボルが昔覚えた要領で、電動ドライバーを使って、等間隔に穴を開けている(1枚目の写真)。7番目はマルセラの誕生日。イトカとフィリップが買ったコクマルガラスを、リボルが作った木製の鳥籠に入れて、マルセラにプレゼントする(2枚目の写真)。マルセラとリボルは仲良く踊り(3枚目の写真)、誕生日パーティの最後に、地元のオーケストラと一種に記念写真を撮る(4枚目の写真)。

そして、大問題は、パーティと同じ日に起きる。パーティに参加していたリボルより小さな少年が、子供達だけが残った場で、「ねえ、君たちもう聞いた?」と言い出す。「何を?」。「高速道路の下の池から男の子(の死体)が引き上げられたんだ」。イトカ:「どんな子?」。「溺死してた」(1枚目の写真)。イトカ:「誰なの? 知ってる子?」(2枚目の写真)〔リボルは、グスタだと確信した〕。「ひどい姿だったから… ぜんぜん…」。ここで、フィリップが割って入る。「パヴェル、くだらない話はやめろ。誕生日にする話じゃない!」。しかし、姉のイトカは、やめない。「警察、そこにいたの?」。「もちろん。医者や葬儀屋も」。ここで、リボルが、「それでも、まだ誰だか分からないの?」と訊く。「どれくらい長いこと池の中に沈んでたのか、誰にも分からない。警官は、その子、多分、逃げ出したんだろうって言ってた」。そこに、マルセラがやって来て、コクマルガラスが逃げ出した鳥籠を見せる。イトカが、「針金を巻いておくべきだったわね」と言う。マルセラが、「この鳥籠、あんたが作ったの?」とフィリップに尋ねると、「僕じゃない、グスタだよ。彼、捕らわれの身になったように思わせたくなかったんだ」。そう言って、横を向くと、それまで隣にいたリボルがいない。その頃、リボルは森の中を走って行き、地面に横になると、悲しさのあまり地面を殴ったり、上を向いて涙にくれたりしていた(3枚目の写真)。そこに、パンが寄ってきたので、抱きしめる。リボルはパンに話しかける。「パン、決心したぞ。彼は、入水自殺すると言って、溺死した。僕は、彼の名前を盗んだ」(4枚目の写真)「これで、隠された真実が明らかになる。明日か明後日には、警察が僕を逮捕しに来る。もちろん、ブジョルティから “魔女” も一緒に来て、『これはグスタじゃない』とバラす。『君、名前は? 誰なんだ? なぜ嘘を付いた? 何をしてきた?』。僕は、警察に すべてを詳しく話すだろう。そして、矯正施設にぶち込まれるんだ。僕は、そんなことされないぞ、パン」。

その日の夜、家の前のテーブルで食事を終えたブランカとエリックはご機嫌で、他の子たちも笑顔が絶えないが、リボルだけがしょんぼりと座っている(1・2枚目の写真、矢印)。ブランカとエリックが夕食の片付けにキッチンに入って行くと、その前を、子供たちが、一人ずつ 「お休みなさい」と言って2階に上がって行く。最後に残ったリボルは、キッチンの前に立って、じっと2人を眺める(3枚目の写真)。

そして、キッチンに入って行き、笑顔のブランカにキスされると、今生の別れのつもりで抱き着く(1枚目の写真)。そして、その奥にいるエリックの前まで行き、「さあ、ベッドに行け」と言われると、また、同じように抱き着く(2枚目の写真)〔ブランカが心配そうな顔で見ている〕。2人がじっと眺めていると、リボルは階段を1段登った所で立ち止り、「休暇、素敵でした。素敵… とっても」と言い(3枚目の写真)、2階に上がって行く。

家中が寝静まった頃、パジャマから服に着替えてベッドで横になっていたリボルは、起き上がると、ベッドの下に置いておいた旧式の懐中電灯を点け、ベッドの下に入れてあったグスタの日記の中から1枚の紙〔家を出て行く事情を書き綴った紙〕を取り出す。そして紙を半分に折り畳むと、靴と一緒に手に持ってフィリップの横に行く。そこで、紙を台の上に置くと、その上に革ベルトを載せ、懐中電灯と靴だけを持って(1枚目の写真、矢印は紙とベルト)、階段を下りて行く。家から出る前に、パンの頭を撫でる(2枚目の写真、矢印)。家から出たリボルは、靴を履き、他には何も持たずに線路まで静かに行くと、線路の上をスカルスコ駅に向かって歩き始める(3枚目の写真)。

しかし、リボルの進行方向の数m先に、突然フィリップが現われる。リボルは逃げようし、それを止めようとするフィリップとで 取っ組み合いの争いとなる。フィリップ:「見つからないよう、こっそり逃げようとしたな!」。リボル:「行かせてよ」。「自分が誰だか分かってんのか、このバカ、変人?!」。「君に手紙書いたよ」。「そんなもん知るか!」。「大声出さないで。ベルト 置いてったんだから」。「知るか!」。2人とも争いを止めると、立ち上がって 怒鳴り合う。リボル:「分からないの?! 僕、グスタじゃない!」。フィリップ:「何だと?! 知らないとでも思ったのか?!」。「どういうこと?」。「君は孤児院の子みたいじゃないし、話し方だって違う!」(1枚目の写真)「どこから来たんだ?!」。「違いがあるの?」。「そうだ。君が僕の弟だったら知りたい! だが、そうじゃないんなら、どうだっていい!」。それだけ言うと、フィリップはリボルを放って、家に戻ろうとする。リボル:「フィリップ、待って。大事なことを話したいんだ」。ここから、リボルの短いナレーションに変わる。2人はレールの上に並んで座っている。「どれくらい そこに座っていたかは分からない。多分、1時間か2時間。僕は、フィリップに全部話した。最初のうちは うまく話せなかったが、話すにつれて安堵感が増していった」。フィリップ:「君、これからどこ行くんだ? 伯母さんと伯父さんのトコか? (そんなことしたら)施設に放り込まれるぞ! 明日、君の姿が消えてたら、ブランカとエリックがどう思うと思う? それに、イトカとマルセラに何て話せばいいんだ?」(2枚目の写真)。リブレ:「僕、手紙に「ごめんなさい』と書いたよ」。「君、悪いなんて ぜんぜん思ってない! そう思ってたら、どこにも行けないハズだ! もしホントに後悔してるんなら、君は話すだろう… 自分が誰だってこと、そして、僕たちを騙してたってことを! 君は、自分の兄に、『彼のことなんてどうでもいいと思っている』と思われたいのか?!」。「まさか、そんな」。「口だけだろう」。ここでフィリップは立ち上がって、家の方に歩き始める。リボルは後を付いていきながら、「本気だよ、フィリップ」と言う。フィリップは、振り向いて、「なら、証明してみせろ!」と言う。「どうやって?」。フィリップは、リブレの所まで戻ると、以前やったように、レールの上を歩いて、どちらが早く家に戻るか競争しようと持ちかける。2人はレールの上を歩き始める(3枚目の写真)。ここから、映画の冒頭にあったナレーションの続きとも言える、最後の長いナレーションが、映画の終わりまで続く。「僕は勝ち、翌日、みんなにすべてを打ち明けた。それは、ホントに大変だったけど、何とかやり遂げた。ブランカとエリックは僕を信じてくれた。僕がブレスレットを盗んでないことも、あの2人のバカが僕を誘拐したことも。警察は、僕がクソの中を歩いて逃げた、あの見捨てられた小屋を見つけて欲しがったが、僕にはできなかった。この夏、たくさんの変化があった。僕は、話し方や態度を変え始めた。でも、変わらないものもある。エリックとブランカは、僕を もう『グスタ』とは呼ばないけど、僕への愛情は変わらない。僕の伯母と伯父は、僕がパネンコ家で暮らすことに、すぐさま、喜んで同意した。きっとホッとしたんだろう。もう僕を育てる必要もないし、自分たちの(儲け)仕事の邪魔にならないから〔愛情のかけらもない悪人ども。そもそも、自分達の愚かな誤解や、浴びせた罵声を詫びるくらいはしたのだろうか?〕。あ、そうそう、猫のザラが逃げちゃった。たぶん、(誰にも構ってもらえなくて)寂しかったんだろう。今思うと、ひょっとしたら、ザラがあのブレスレットを盗んだのかもしれない。ザラは犬でもないのに、いつも何かをテラスに埋めてたから。他にも(語るべきことは)たくさんあるけれど、僕が、一つだけ固く信じていることを言っておこう。あの夜、レールの上で、フィリップと競争していた時、僕の誘拐は終わったんだ。誘拐されて 家に〔映画の題名〕戻れた!」。
