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Entre nos エントレ・ノス/ずっと一緒に

アメリカ映画 (2009)

この映画は、映画の中で6歳のアンドレアとして登場する少女アンドレア・カバルが、大きくなって俳優、監督、脚本家となり、この映画を作成した〔監督・脚本・俳優(母マリアナ)として〕、一種の自伝。ただ、監督の名前は、映画の中のアンドレア・カバルではなく、パオラ・メンドーサ(Paola Mendoza)だ。だから、映画の中のマリアナ・カバルと、兄ガブリエル・カバルが 本当はどうなったのかは、名前が偽名のため調べようがない。2つのサイト、https://www.lohud.com/ の 「映画監督パオラ・メンドーサがロサンゼルスのギャングから女性の行進を組織するまでの道のりについて語る」(2020.2.27)と、https://www.wsws.org/ の 「『Entre Nos』と赤い父: 合衆国の生活と歴史の側面」(2014.6.23)に基づいて、パオラ・メンドーサだけは、どんな人生を送ったかが正確に分かる。
 彼女は3歳の時〔1981年生まれなので1984年〕、母親と兄と一緒に コロンビアのボゴタからこの国に着き、父親と再会するが、彼はすぐに家族を捨てた。「彼は母に仕事に行くと言って、二度と戻って来きませんでした」 とメンドーサは語る。家族はアパートから追い出され、公園のベンチで幾晩も過ごした後で、24歳にしてスペイン語しか話せなかった母親は ファーストフード店で仕事を得ることができた。メンドーサによれば、「私が子供のときずっと、母は数え切れないほどの二交代制でトイレ掃除を行い、近所のファーストフード店でハンバーグを焼いていました。私たちは 家の中のゴキブリのことや、コロンビアに戻りたいという切望について、話さないようにしていました。その代わり、根性、涙の試練、心痛への対処を通して微笑むことを学んだのです」。6年生まで “オールA” だったパオラは、7年生になった時、困難を抱える子供たちのための “学級担任制” の公立学校に行かされた。しかし、そこでは学習は不可能だった。「誰もが誰かと戦っていて、そこは完全なカオスでした」と彼女は言う。「教師は全員が元軍人で、黒人や褐色人種の生徒を教育するための非常に軍事的なやり方でした。彼らは、GPA 4.0〔1.6~2.9:可、3.0~3.4:良、3.5~3.7:優〕の生徒だった私を(行政は)そんな所に入れたのです。その時点で、アメリカの教育制度は、私には “質の高い、最低でも白人の同級生の大多数が受けていたような” 教育など受ける資格がないと決めたのです」。そのため、メンドーサは12歳の時にギャングに巻き込まれ始める。幸い、見る目のある教師が彼女のために仲介し、彼女が言うところの “学校から刑務所への直行ルート” から、メンドーサを救い出した。「素晴らしい先生が、私が学習ではなく、他のこと(麻薬とか…)に取り組んでいることに気づいてくれたのです」。彼女の母親は娘がギャングに巻き込まれかけていたことに気付いていなかったが、状況を理解すると、娘をコロンビアに送り返し、叔母の元で暮らすようにさせた。3年後、高校の最終学年を終えるためにロサンゼルスに戻ったとき、メンドーサは別人になっていた。「私は夢と野心があり、私を信じてくれる人たちがいました」。彼女は、コミュニティカレッジで3年間学んだ後、UCLAで演技の学位を取得し、その後サラ・ローレンス大学で演技と演劇演出の修士号を取得した。その後は、俳優としては、2003年から2024年まで、映画、ショートムービー、TVドラマ合わせて14の作品に出演、監督としては2006年から2024年まで7作品、脚本家としては2009年(本作)から2024年の間に5作品を担当している。しかし、最近は、映画よりも、最初の引用サイトにあった “女性の行進(Women’s March)” の方に重点を置いている〔職業欄のトップは活動家になっている〕。女性の行進 が勢いを増し始めた時、メンドーサとスコルニク(Michael Skolnik)は有色人種の女性たちの声を運動に取り入れるのを助けた。彼女はこの行進の全国的な主催者として働き、このイベントを文化的な運動にするためにメッセージ通信を微調整するのを助けた。「トランプ政権下で、私たちは1万歩後退した」とメンドーサは語る。「彼は、私たちが想像もしなかったことをした。親子の引き離しもその一つだ。不法移民がどれほど恐怖を感じていたかに、私は打ちのめされた」。この時に行われた行進に、アメリカ全土で500万人以上が参加し(下の写真参照)、世界中にも広がり、あらゆる点で成功だった〔トランプは、親子を引き離す移民政策を撤回する〕
 映画では、6歳の時、ボゴタ→メデジン→サンタ・マルタと引っ越した後、ニューヨークに来るという設定になっているが、実際は、3歳の時、ボゴタから直接ロサンゼルスに来ている。悪魔のような父が、3人がコロンビアからやってくると、さっと消えるところは全く同じで、そのあと、アパートを追い出され、公園のベンチで一夜を明かすところまでは同じ。大きく違うのは、映画でメインを占める空き缶拾いによる生計の立て方と、母のエンパナーダ名人。実際には、トイレ掃除とハンバーグになっていて、視覚的にはつまらないので、映画の方が3人で頑張る姿が見られて面白い〔より可哀想と言うべきなのかも〕。映画は、ラストが何となくハッピーエンド風になっているが、現実は恐らくもっと厳しいものだったであろう。偽名の兄ガブリエルと、母マリアナの2008年時点での状況が、映画の最後に書かれたような幸せなものだといいのだが。

ガブリエル役はSebastian Villada(セバスチャン・ヴィラダ)。この映画が、映画初出演で、翌年、TVドラマのシリーズに1回だけ出て映画界を去った。受賞はしなかったが、自然な演技は高く評価されている。

あらすじ

1987年の夏。映画の冒頭、地理感を示すため、マンハッタン島を背景に高架鉄道が走る光景が映る。ここは、ニューヨーク市クイーンズ区のジャクソン・ハイツ(Jackson Heights)と呼ばれる地区。BBCの2023年3月22日の記事のタイトルは、『ジャクソンハイツ:ニューヨークを象徴する地区』。「クイーンズの北西隅にあるジャクソンハイツは、地球上で最も多様性に富んだ場所の一つだ。正確な数字を突き止めるのは難しいが、ジャクソンハイツには少なくとも160の言語を話すおよそ18万人が住んでいると考えられている」。「地区の南端、クイーンズを背骨のように貫くのがルーズベルト通りだ。ここでは、7番線の電車が頭上をガタゴトと走っても会話が止むことはなく、むしろ騒々しくなる」(1枚目の写真)。「ダイバーシティプラザ(ジャクソンハイツ・ルーズベルトアベニュー地下鉄入口近くの歩行者専用ゾーン)から東に人混みを辿っていくと、リトルインディア(チベット人、ネパール人、バングラデシュ人、パキスタン人だけでなく、他の民族が同数いることを考えると、誤称かもしれない)の次にリトルコロンビア(コロンビア人、エクアドル人、ペルー人、アルゼンチン人、ウルグアイ人)になる。そこでは、ふわふわのアルモハバナ(コロンビアのチーズパン)やサクサクのエンパナーダを次々と作るラテンアメリカのパン屋が並んでいるエンパナーダは、この映画の主役の一つ〕。この映画の主人公、この地区に移民として暮らし始めて2週間しか経っていないマリアナが、せっせとエンパナーダを作っている(2枚目の写真)〔左上の具材をパイ生地で挟み、あとは揚げるだけ〕。エンパナーダで出来上がると、夫のアントニオと、彼の友人のアレホとローサに振る舞う(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

食卓が狭いため、10歳のガブリエルと6歳のアンドレアは、ベッドのマットレスに頭を付けて放置されている(1枚目の写真、お粗末な簡易ベッドの左側に子供用の床マットレスが置いてある)。食卓の3人は、行儀悪く食べながらトランプ21(ブラックジャック)をやっていたが、最後の料理が出たので、ローサはマリアナに加わるよう声をかける。マリアナは、「ガビ、代わりに遊んで」と呼ぶ。ガブリエルはアレホの正面に座ると、アントニオが裏カード1枚と表カード〔よく見えないが、K,Q,J の何れか→10点〕の計2枚を配る。ガブリエルの横に顔を付けるように屈んだマリアナは、「父さんに気をつけて。ちょっとイカサマ師だから」と言い、2人は笑顔になる(2枚目の写真)。それを聞いたアントニオは、「ああ、俺はイカサマ師だ」とニヤニヤする(3枚目の写真)。2枚のカードを見たガブリエルは、何も言わずにカードを伏せる〔3枚目は要らないという意志表示〕。それを見たマリアナは、「その通り。もう1枚は要らないわ」と、ガブリエルの判断に賛成するが、立ち上がる時にアントニオのグラスを倒してしまい、皮肉られる。
  
  
  

夕食のシーンの次は、ベッドのシーン。粗末なベッドには、マリアナと妹のアンドレアが横になり、床マットレスにはガブリエルが横になって ぐっすり眠っている(1枚目の写真)。一方、アントニオはバーで若い女性に体をくっつけて踊っている。しばらくすると、店の男がやって来る。アントニオがお金を女性の手に渡すと(2枚目の写真、矢印)、また密接抱き締めダンスが続く。アントニオの下劣な人間性が一目で分かる。
  
  

恐らく、あくる日の朝早く。マリアナがシャワーを浴びていると、そこにアントニオが入ってくる。マリアナが、一晩中アントニオが外出していたことを責めると、彼は 「祝ってたんだ」と答える。「祝ってたって、何を?」。「新しい仕事だ」。「新しい仕事?」(1枚目の写真)。「ああ、マイアミだ」。「じゃあ、あたしたち、マイアミに行くのね?」。「いいや、行くのは俺一人だ。心配すんな、たかが数ヶ月のこった」。「ダメよ、あたしたちを、ここに置いてかないで」。「俺は行って、金を稼ぐ。落ち着いたら、お前たちを呼ぶ」。「ここに、住み慣れたばかりなのに」。「俺は違う」。「あんたはいつだってそう。あたしたち、あんたと一緒に、ボゴタ〔コロンビアの首都〕、メデジン〔コロンビア第二の都市〕、サンタ・マルタ〔カリブ海沿岸の都市〕、そして、アメリカまで付いてきたのよ!」。「戻ってくる。心配すんな」。そして、2人の口論はだんだん大声になる。「あたしたちを見捨てて出てくあんたには、もううんざり! この国に来てまだ2週間しか経ってないのよ!〔だから、彼女は英語が話せない〕 」。床のマットレスで横になったガブリエルは、母の悲鳴その喧嘩をじっと聞いている(2枚目の写真)。
  
  

そして、子供たちが起きてくると、アントニオ肩掛けバッグ1つを持ってアパートから出て行き、息子と娘に別れを告げる(1枚目の写真)。マリアナは、場所不明の所から夫の出立を見ている(2枚目の写真)〔アパートの部屋は1階だったのに、なぜ?〕。アントニオは、マリアナを見上げると、何も言わずに7番線の駅に向かって歩いて行く(3枚目の写真)。
  
  
  

アントニオが去った後、部屋に戻ったマリアナは、夫が残していった封筒の中にあった現金を見てみる(1枚目の写真)。沢山そうに見えるが、中に入っていたお札は14枚。そのうち、上から4枚は1ドル、8~11枚目までが5ドル、額面順だとすれば、最後の3枚は10ドルかもしれないが、そうだとしても たかだが60ドルほどのお金で、どうやって数ヶ月暮らせというのだろうか? それでもないよりはマシなので、マリアナはお札をまるめると、棚に置いてあった聖マルタンの像の下から押し込み(2枚目の写真、矢印)、「守ってね」と頼む。
  
  

アントニオから何の連絡もなく、安アパートには電話もないので、マリアナは夫の携帯の電話する。しかし、留守録モードになっていて通じない(1枚目の写真)。心配になったマリアナは、アレホなら何か知ってかもしれないと思い、2人の子を連れてアパートを訪れる。そして、「あなた、アントニオと電話で話した?」と尋ねると、「ええ」と答えたアレホは、2人の子供に、奥の部屋でTVを見るよう勧める(2枚目の写真)。アンドレアは見たくないと言うが、子供に聞かれたくない話になるので、アレホはマリアナの協力を得て2人を部屋に押し込む。そして、アレホはマリアナを居間に連れて行くが、マリアナはアレホの異常な対応に不安になり、「何なの?」と訊く。アレホは、素直にアントニオの言葉を伝える。「マリ、彼は戻って来る気はないって言ってた」。それを聞いたマリアナは、「また、あたしたちにマイアミまで行かせる気?」と呆れたように言うが、アレホは、「違うんだ」と言う。「どういう意味?」。「昨日、彼から電話がかかって来た時、あんたにも電話しろって言ったんだが… 彼は、ここに戻る気はないし、あんたたちに来て欲しくもないって言ったんだ」(3枚目の写真)。このことは、離婚という法的措置も取らず、観光ビザしか持っていないマリアナと子供たちを見捨てて逃げたことを意味する。何という腐った男であろう。居間に置いてあったアレホの携帯で、アントニオに電話するが、留守録で通じない。マリアナは、「じゃあ、マイアミまで行くわ」と言うが。アレホは大きな街だから探すことは容易ではないと止める。しかし、「あたし、いったいどうすりゃいいの? 夫なしで、子供たちを抱えて」という声に、可哀想に思ったアレホは、それほど親しい訳でもないのに、持っていたお金を全部渡す。
  
  
  

マリアナは、さっそく子供を2人連れて旅行会社に行き、マイアミ行きの片道チケットを3枚買おうとする(1枚目の写真)。しかし、277ドルと言われると、そんな大金は持ってないので諦めるしか仕方がない。旅行会社から戻る7番線の電車の中で、ガブリエルは、「ママ、パパに何かあったの?」と訊く。「分らないの」。「パパと話した?」(2枚目の写真)。「でも、みんなでマイアミに行くわよ」。「いつ?」。「すぐよ」。
  
  

すべての道が絶たれたマリアナは、家族3人が生きていくために、得意なエンパナーダを売ってお金にしようと考える。そこで、トレイに10数個の焼いたばかりのエンパナーダを入れると、上から布巾を掛け、コロンビア料理のレストランに持って行き、売ろうと試みる(1枚目の写真、矢印)。しかし、店主は、「うちでは、よそで作ったものは出しません」と断る。そこで、マリアナは方針を変え、「仕事を探してるんです」と言うが、それに対しても、「求人はしていません」と断られる。トレイのエンパナーダの処分に困ったマリアナは、人混みの中を歩きながら、「エンパナーダ」と何度も言って売ろうとするが、誰も買おうとしない(2枚目の写真、矢印)。3枚目の写真は、交差点に立って、1個1ドルと破格の安値で声掛けしているエンパナーダとガブリエル。しかし、誰も買わない〔1個1ドルでは全部売れても10数ドル。材料費がかなりかかっているので、収入はその半分。これでは、いくら移民の多いクイーンズ区でも暮らしていけない〕
  
  
  

マリアナには、他に手段がないので、同じことを数日繰り返し、売れなかったエンパナーダは、アパートに戻って3人で食べる。そんな夜、アンドレアが、母の雰囲気が以前のように明るくないと悲しそうに話したことから、マリアナは、反省し、「2秒で笑わせてあげる」と言い出す。「ムリよ」。マリアナは、「1、1.5…」とカウントした後、アンドレアをくすぐり、アンドレアは笑い出し(1枚目の写真)、それを見たガブリエルも笑顔になる(2枚目の写真)〔この時には、まだ元気があった〕
  
  

翌日、マリアナはアンドレアを抱き、ガブリエルにエンパナーダのトレイを持たせて街に出て行く(1枚目の写真、矢印)。そして、交差点の反対側にスペイン系の女性4人が集まっているのを見つけると、走って行って1個1ドルで売ろうとするが、誰も買わない。そこで、2個1ドルに下げると、買おうとする女性が現われるが、実は、この女性達は、求職のために集まっていて、その時、車が乗り付け、4人は車に駆け付け、うち2人が車に乗り込む。そこで、マリアナは、今度は、この求職に与ろうと、エンパナーダの販売を子供2人に任せ(2枚目の写真)、求職の列に並ぶ。次に来た車から降りた女性は、“ボタンを縫い付けることができる女性2名” を探し、マリアナを含め4人が手を挙げる。マリアナは先頭にいたので、2人の中に選ばれるが、それを見た子供2人が立ち上がり、アンドレアが、「ママ、これ忘れてる」と呼びかけると、子守付きでは困るので、別の女性が選ばれる。その夜、アパートに戻ったマリアナは、不要になった結婚指輪を売ろうと考える。
  
  

翌朝、マリアナは、マットレスに横になっているガブリエルに、お腹ら空いたら、ストーブの上の米と豆を食べるように言うと、エンパナーダのトレイを持って、1人で出かけようとする。アンドレアは置いていかれるのを嫌がるが、マリアナは、ゲームでかくれんぼをしないかと持ち掛け、アンドレアが両手で目を覆って「1,2,3,4,5」と数えているうちに、姿を消す(2枚目の写真)。マリアナは、今までより強引に、交差点で信号待ちしている車に駆け寄って、「お願い、セニョーラ」と、エンパナーダを売ろうとするが、相手にされない(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

アパートに残された2人は、床のシーツに横になったアンドレアが、マットレスに横になったガブリエルに、「何かする?」と訊く。「何も」(1枚目の写真)。「何も、ってどういうこと?」。「何もだ」。消極的な兄を変えようと、アンドレアは、「英語のクラス!」と笑顔で言い、嫌がるガブリエルをくすぐってその気にさせる。ガブリエルは、最初に英語の単語を発音し、それをアンドレアに復唱させる。最初の1語は 「House〔この映画は全編スペイン語だが、英語は空色で表示する〕とまともだったが、次の単語は「Shit(くそっ、ちぇっ)」(2枚目の写真)。3番目はもっとひどくて、「Bitch(いやな女,くそ女)」。その時、アパートの窓が叩かれ、ガブリエルに気のある中国系移民の少女が、プールに行こうと誘う(3枚目の写真)。マリアナは行きたがるが、ガブリエルはアパートにいろと言われたので行き渋るが、マリアナが頼み込むので、ガブリエルは狭い部屋の中に閉じ籠っているのにもうんざりしてきたので、一緒にでかける。
  
  
  

電車に乗って向かった先は、金持ちの家のプール。3人は無断でプールに入る(1枚目の写真、矢印は脚を抱えて飛び込むガブリエル)〔服や靴を履いたまま〕。そして、水を掛け合って遊ぶ(2枚目の写真)。ガブリエルと中国系移民の少女がプールの端に座って話していると、家の主人に見つかり、「出てけ!」と怒鳴られる。3人は街路に出ても走って逃げるが、角を曲がる際にガブリエルが転ぶ(3枚目の写真、矢印)。3人は高架鉄道の駅に上がって行く鉄の階段を走って上がっていくのを母に見つかってしまう。
  
  
  

だから、アパートに戻ったガブリエルは、マリアナからアンドレアのお守りをしていなかったことで強く叱かり、マットレスの上に突き飛ばす。しかし、その際、ガブリエルが脚に怪我をしていることが分かると(1枚目の写真)、母は急に心配になる。そこで、「エルムハースト病院センター、コミュニティ医療センター」と表示された建物の前まで3人で行くhttps://www.nyc.gov/html/ によれば、クイーンズ区で比類のない最高の医療機関だが、低所得世帯向けに各種のケア保険プログラムを用意していると書かれている〕。しかし、地域事情に詳しくないマリアナは、その立派な構えから、支払いは不可能だと考え、「アパートで、きれいに洗ってあげる」と言う(2枚目の写真)。次のシーンは同じ夜でもマリアナの着ている服が違うので、別の日であろう。マリアナは、公衆電話からアントニオの携帯に電話するが、また留守録だったので、夫への怒りを公衆電話に向け、受話器を何度も叩きつける(3枚目の写真、矢印)。
  
  
  

マリアナの生活が変わる転機となる第一のシーン。マリアナは、ガブリエルとアンドレアを連れて映画館に行く(1枚目の写真)。しかし、チケット売り場で21ドルと言われると、そんなお金はなかったので(2枚目の写真、矢印)、子供2人分だけ払い、2人には、「映画が終わったら、すぐ出て来なさい。外で待ってるわ」と言って観に行かせる。マリアナが映画館の外で、缶入りのリンゴジュースをストローから飲んで待っていると、ダンボールや空き缶を山積みにした金属製のカートを60歳くらいの白人女性が押し、一緒に歩いている夫の白人男性が、ゴミ箱から缶を拾っては妻に渡している(3枚目の写真)。マリアナは、こんなお金の稼ぎ方もあるのだと、初めて悟る。
  
  
  

この夫婦はどこかに行ってしまったので、ガブリエルとアンドレアが映画を観終わって出て来ると、マリアナは同じような人がやってくるのを、じっと待つ(1枚目の写真)。すると、如何にも廃品回収のプロのように見える黒人の男性が交差点で空き缶を選んでは袋に入れている(2枚目の写真)。マリアナは2人の子供と一緒に、この黒人男性の後を追う(3枚目の写真)。行き着いた先で、マリアナが物陰から見ていると、黒人男性が、自分の集めた缶のプラ袋だけでなく、マリアナと同じ年頃の女性が集めて来たプラ袋も、トラックに投げ込んでいる。彼は、どうやら、廃品回収のまとめ役らしい。マリアナは、この時、詳しく訊いてみればよかったのに、ここに来ればいいんだと考えてその場を去る。
  
  
  
  

3人は、さっそく実行してみようと〔3人とも同じ服装なので〕、スーパーに行き、カートを盗んで走って逃げ出す(1枚目の写真)。次のシーンでは、マリアナは道端のゴミ箱の蓋を開け、中から缶を探す(2枚目の写真、矢印)。そして、あまり関心がなさそうな2人に、「これが15セントになるのよ」と言って、拾った缶3個を見せる〔1個につき5セント〕。ここで注意すべきなのは、スーパーからカートを盗んだ時とは、3人の服装が全く違っている点。つまり、2枚目の写真は、カートを盗んだの翌日ということになる〔盗んだカートはどこに隠したのだろう? アパートの部屋は1階なので、部屋に持ち込めなくはないが…〕。そして、そのすぐ後のシーンで、マリアナは、缶で一杯になったポリ袋を2つぶら下げてフードトラックの前を通りかかる。期待を込めて、フードトラックの後部ドアを叩くと、店の女性が現われ、缶が一杯入った籠を渡してくれる(3枚目の写真)。ここでは、ガブリエルのシャツの色が、オレンジ(肩は茶色)から淡いブルー・パープルに変わっている。ということは、2枚目とは別の日ということになる〔慣れていないので、缶を集めるのに時間がかかった?〕
  
  
  

翌朝、3人が、カートに缶を満載して回収トラックがいた場所に行くと〔ガブリエルのシャツの色が、白のノースリーブからストライプ柄のに変わっている〕、そこには “後を追って行った黒人” がいるだけで、トラックはいない(1枚目の写真)。黒人〔ジョー〕は、「遅い。行っちまったぞ」と言う。コロンビアの小学校で英語を学んだガブリエルは、「トラック?」と訊く(2枚目の写真)。「ああ。奴は、朝まで戻って来ん」。マリアナは、ガブリエルに 「何て?」と訊く。「明日、また来なきゃいけない」。「どうして?」。「トラックが行っちゃった」。ジョーは、2人が何事かスペイン語で話し合っているので、「今晩、俺が 代わりに見ててやってもいいぞ、そうすりゃ、仕事が無駄にならんだろ」と提案する。「彼、僕らの缶を見張っててくれるって」。「10ドルだ」。ジョーは、マリアナにも分かるよう、10ドル札を見せ、スペイン語で 「10ドル」と言う。マリアナは、「お金を要求してるの? お金なんかないわ。缶はあるわ。それが欲しいの?」と、状況が分からないので喰ってかかるように訊く。マリアナの反応が激しいので、ジョーは 「好きにしな。あんたのモンだ。俺には関係ない」と言って、立ち去ろうとする。それを見たマリアナは、知っている数少ない英語を使って、「5」と言う。ジョーは、すぐに 「8」と言う。マリアナは譲らずに 「5」とくり返し、ジョーも 「8」と譲らない。それでもマリアナが 「5」と言うと、ジョーは、相手が英語も話せない子連れだということに配慮したのか、「あんた、そんな小さいのにタフだな。明日は時間通りに来いよ。いいな?」と言ってくれる。マリアナは、「ありがとう(Gracias)。缶、横取りしないでね」と言い〔ジョーは、“Gracias” だけ分かっただけで、次に何を言われたのかは分からない〕、ジョーは、「明日は、必ず早めに来いよ」と言い〔マリアナには分からない〕、マリアナは 「缶、ちゃんと見ててね」と言い、ジョーは 「7時だ」と言う(3枚目の写真、ガブリエルの後ろにカートも残してある)〔一番の謎。なぜマリアナは持って来た缶の袋とカートをジョーに預けたのだろう? ここに至るまで、3回服が変わっている。ということは。大量の缶を抱えていても、毎日困らなかったことになる。それなのに、今回に限り、なぜ貴重な5ドルを無駄にして、わざわざジョーに預けたのだろう?〕
  
  
  

次のシーンでは、3人が手慣れた感じで缶を集めている(1枚目の写真)〔ガブリエルのシャツの色が、白のノースリーブ柄の草色に変わっている〕〔カートがあるということは、この日の朝に、ジョーと会い、5ドル払ってカートと缶を返してもらい、幾らか分からないが、トラックの業者に缶を売ったことになる〕。そして、次のシーンではアンドレアを乗せたカートを2人で押して行く(2枚目の写真)〔ガブリエルのシャツの色が、2節前の2枚目と同じ淡いブルー・パープルに戻っているので、別の日〕。3枚目の写真では、前節の主役だったジョーがようやく姿を見せる。2つ前の節の3枚目のフードトラックの時の淡いブルー・パープルのシャツを着たガブルエルが、「525個」と言って、525個目の缶をジョーに渡す。すると、ジョーが、「今日はよくやったな」と言い、「26ドル25セント」とトラックの男に告げる。マリアナが 「ありがとう、大仕事だった」と嬉しそうに言うと、ジョーも、「Mucho trabajo(大仕事)」とスペイン語で返す。
  
  
  

マリアナの生活が変わる転機となる第二のシーン。3人がアパートに戻ると(1枚目の写真)、部屋のドアに錠前金具を付けている見慣れぬ男がいる。人の気配を感じて振り向いた中国系移民の50歳代の男に、マリアナが 「何?」と声をかける。すると、この金儲けしか頭にない嫌な大家は、「あんたの夫は何ヶ月も支払っとらん!」と怒鳴るように言う。「え、何?」。ガブリエルは 重大な内容なのですぐに母に訳して伝える。「彼、僕たち、払ってないって言った」(3枚目の写真)。「3ヶ月だ」。「違うわ、彼に言ってよ、私、1ヶ月しか借りてないって。1ヶ月。7月だけ」。「7月しか借りてないって…」。中国系の嫌な大家は、ガブリエルの話を遮り、「払わん奴は、出てけ!」と怒鳴る。マリアナは、「あたし、払う、あたし、ちゃんと働いてる、見て見て、お金ならある。受け取って」と言ってお札を見せるが、嫌な大家は、「3ヶ月分だ。1ヶ月じゃない」と言って拒否する〔それにしても、アントニオは、部屋代も払わずにマイアミに逃げていったことになる。なんという卑劣なクズ男だろう〕
  
  
  

頭のいいガブリエルは、それ以上母とつき合うのはやめ、急いで玄関から外に出ると、窓を上げて室内に入り込む(1枚目の写真)。そして、戸棚から服を取り出して窓から投げ捨て、他に何を持ちだしたのかは分からないが、最後にお金の入った聖マルタンの像を持って窓から出る(2枚目の写真、矢印は)。この映画で、アントニオの次に嫌らしい大家から逃げ出したマリアナとアンドレアは、ガブリエルがカートに入れておいた物を持って、アパートから逃げ去る(3枚目の写真)。
  
  
  

住む場所を奪われたマリアナは、2人の子供と一緒に公園に行く。そこで、3人はブランコに乗って遊ぶ。朝、戻って来てから半日以上公園で過ごし、辺りが真っ暗になると、公園のベンチにガブリエルとアンドレアの頭を自分の両膝に乗せて横にならせる(1枚目の写真)。ガブリエルは、「ママ、僕たちまだマイアミに行くの?」と尋ねる(2枚目の写真)。「そうよ。でも、ちょっと時間がかかるわ。いいでしょ?」。「いいよ」。会話はさらに続く。「ママ、僕 怖いよ」。「怖がることなんか、ないわ。すべて、うまくいくから」。ここで、アンドレアが口を出す。「だって、スーパー・ママだから」。「そうよ、あたしはスーパー・ママ。そして、ガビは、あたしたちのスーパーマンだし、あんたは、あたしたちのスーパーガールだもの」。2人の子供は、そのまま眠りにつく(3枚目の写真)。初めてのホームレス体験だ。
  
  
  

翌朝、マリアナは、頭を向け合ったまま眠っている2人を起こす(1枚目の写真)。お腹の空いた3人が向かったのは、「Mini Picanteria EL GUAYAQUIENO(エクアドルのグアヤキルのミニ・大衆食堂)」と書かれたフードトラック〔前に出てきたフードトラックとは違う/これから何度も出て来る〕。マリアナの顔を見た女性店主は、まだ営業開始前なので缶は一つもないと言うが、マリアナが店に来た理由は違っていたので、「分かってます。何か、お手伝いできないかと思って来たのです」と答える(2枚目の写真)。如何にも疲れた3人を見た店主は、「マリアナ、大丈夫?」と訊く。「ええ。何でもします」。「今日は、何もないのよ」。「お願い」。親切な店主は、3人が朝食もまだらしいのに気付くと、「分かったわ、まず あんたに朝食作ってあげないとね」と言ってくれる。次のシーンでは、昼食か夕食かは分からないが、アンドレアが慈善配布の人から3人分のアルミ箔で包んだ物をもらってくると、それを、道路端に座った2人に渡す(3枚目の写真、矢印)。アレホに助けてもらおうと思ったアンドレアは、夜になり、彼のアパートを訪れるが、彼はもうそこには住んでいなかった。
  
  
  

その夜、マリアナは全財産を使って、格安ホテルで1泊する(1枚目の写真)。事前の会計の際、後ろにある自販機を見て、アンドレアが 「ママ、お腹空いた」と言う〔夕食を食べていない〕。それを聞いて自販機を見たガブリエルが 「キャンディー・バー、買っていい?」と訊く。アンドレアは 「ポテトチップ買っていい?」と訊く。マリアナは、手元に残ったコインを見て、「1個分しかない」と言うと(2枚目の写真、矢印はコイン)、ガブリエルはお腹が少しでもふくれるポテトチップに賛成する。ポテトチップの袋を持ったアンドレア、ガブリエル、マリアナの順に部屋に入って行くが、アンドレアがベッドに座ろうとすると、マリアナは 「ダメ、ダメ」と止め、もう座ってしまった娘を立たせると、掃除もしてなくて汚いベッドカバーを床に捨てる。その下のシーツも、前の人が使ったままで、くしゃくしゃになっている。その上に、3人は靴のまま座り、ポテトチップを子供2人で食べるが、小さな袋なのですぐになくなってしまう(3枚目の写真、左端に落ちているのがベッドカバー)。
  
  
  

満足に睡眠も取れなかった3人は、翌朝早々汚いホテルを出て、公園のベンチにぐったりして座り込む(1枚目の写真)。その日、缶探しをするシーンはなく、夜になって一銭も持ち合わせていない一家は、跨線橋の階段の途中にある狭い踊り場で一夜を明かすことにする(2枚目の写真、矢印)。幾らなんでも鉄板の上には寝られないので、マリアナはガブリエルに段ボールを拾って踊り場まで持って来るよう頼む〔アンドレアは、マリアナに抱かれて眠っている〕。2日前の公演のベンチよりもひどいホームレスだ。マリアナは、「ガビ、座って」というが、ガブリエルは 「大丈夫」と言って立っている(3枚目の写真)〔休憩するだけだと思った〕。そこで、マリアナは、「坊や、お願い。あたしたちは ここで一夜を過ごすのよ。座ってちょうだい」と頼む。ガブリエルの自分の環境の変化にがっかりしながら、段ボールの上に腰を降ろす(4枚目の写真)。そして、「ママ、どうしてコロンビアを離れたりしたの?」と訊く。マリアナは、「あんたの父さんのため」と悲しそうに答える。
  
  
  
  

朝になり、マリアナはまだ眠っていて、ガブリエルとアンドレアが起きている(1枚目の写真)。跨線橋の天辺で一夜を明かしたジョーは、3人の前を通りすぎて地面まで行き、散乱しているゴミの中からプラ袋を拾ってくると、「やることがあるだろ。行けよ。カートは下にある」と言ってガブリエルに渡す。ガブリエルは、生き方を教えてくれたジョーに、「ありがと」と言ってポリ袋を受け取ると、階段を駆け降りて行く。そして、次のシーンでは、ガブリエルが一人でカートを押して歩き、ゴミ箱を見つけては、中に捨ててある缶をカートに投げ込む(2枚目の写真)。一方、目を覚ましたマリアナは、地面に座り込むと、手近に落ちている缶をポリ袋に入れる(3枚目の写真)。しばらくすると、ガブリエルが空になったカートを押して、疲れた顔で戻ってくる。そして、7時に間に合って、集めた缶を売って得たお金をマリアナに差し出す。それを受け取ったマリアナは、ガブリエルの思いやりに感謝して頬にキスし、両手で顎をもって、「ありがとう。どうしてそんなに優しいの?」と称える(4枚目の写真、矢印はガブリエルが渡したお札)。
  
  
  
  

マリアナの生活が変わる転機となる第三のシーンの端緒。マリアナは親切なジョーが紹介してくれた紙の番地を辿り、「貸間あり」の場所に行き着く(1枚目の写真)。ドアが狭い間隔で並んだ廊下を、ブリートという女性が先導して行く〔間隔が狭いのは、各部屋がホテルの1室のように狭いから(トイレもない)〕。そして、案内されたのは、一番安い部屋。それでも、借り賃は週150ドル〔週7日働いても、毎日22ドル稼がないといけない。食費を含めると、もっと必要だ〕。マリアナは、了解し、「私、今夜、要る」と、たどたどしい英語で言う(2枚目の写真)。「いいわ。150ドル払って」。「今夜、泊る、ベビー、私、彼」。「OK」。「でも、払わない、今日」。「悪いけど、ダメよ」。そう言って、ブリートは3人を部屋から出そうとする。「でも、明日、払う」。「明日払うなら、今夜はダメ」。「ジョーが教えてくれた」。「ジョー?」。「ええ、ジョーが、ここならあたしも泊まれるって言ってた」。「だけど、部屋代は彼のものじゃない。私のものでもない。私の上司のものなの。だから、悪いけど」。ここで、マリアナが急に、「トイレに行かないと」と言い出し、ガブリエルに、「彼女に訊いて、トイレだって」と頼む。ガブリエルが 「トイレ」と言うと、ブリートは 「廊下の先」と指で指し、我慢しきれなくなったマリアナは、バッグを放り出して部屋から走り出て行くが、間に合わずに、廊下で吐いてしまう。それを見たブリートは、“つわりによる嘔吐” だと判断し、アンドレアを自分の部屋に行かせる。2人だけになるって、ガブリエルが心配して 「大丈夫?」と訊くと(3枚目の写真)、マリアナは頷き、「あの女(ひと)にタオルか何かあるか訊いてみましょ」と言う。
  
  
  

ブリートは元来優しい女性なので、マリアナが妊娠していると知ると、部屋代後払いで泊めさせてくれる。夜になり、ベッド〔もちろん、1つしかない〕に入ったガブリエルに、マリアナは 「あたしに聞きたいことある?」と尋ねる。ガブリエルは首を横に振る。「何が起きてるのかについて」。ガブリエルは肩をすくめる(1枚目の写真)。「父さんについて、何か質問は?」。ガブリエルは何も言わない。「あたしたちは、ほんのちょっと、ここにいるだけよ。あたしが、お金を手に入れるまで」。「僕たちが、お金を手に入れるまで」。「そうね、あたしたちがお金を手に入れるまで。そしたら、マイアミに行きましょ。いい?」。ガブリエルは、ほんの少しだけ頷く〔あまり、行きたくない〕。マリアナは、ガブリエルのすぐ前まで近寄ると、「大好きよ」と言い、ガブリエルも、「僕も」と返す(2枚目の写真)。
  
  

翌朝、マリアナは、ガブリエルがアパートから持ち出したエンパナーダを作る道具を使って、20個ほどを作っている〔揚げる鍋には、電気コードが付いているので、粗末な部屋でも作ることは可能〕。そして、それを売って得たお金をブリートの所に持っていくが、当然足りない〔1日分はあるかもしれないが、要求されている1週間分には到底足りない〕。マリアナは謝ったあとで、お腹にいる胎児のことで 「Baby…」と言うと、ブリートは 「分ってる」と言って頷く。「助けて欲しいの」。「ん?」。「お願い、助けて… Help」。「オーライ、何ヶ月?」。どうして意味が分かったのかは不明だが、マリアナは 「1… 2…」と言う(1枚目の写真)。しかし、このスペイン語がブリートに分かったのかは不明。「で、何がしたいの?」。「No、No」。「No?」。マリアナは首を横に振る。「分かったわ。マリアナ、医者だと300ドル。Mucho(たくさん)。でも、他の方法も… この家で。La casa(家)」。マリアナは 「ここ?」と下を指し、「あなたがやるの?」とブリートを指す。「私、あなた、助ける」。「考えなきゃ」。マリアナは、自分の頭に指をつけ 「Think」と言う。「もちろん、そうよね。でも、マリアナ、すぐ決めるのよ…」。そして、親指と人差し指を少しだけ離して 「Poco(少し)」と付け加える。頷いたマリアナは、外に出て行くと、公衆電話の受話器を持ってアントニオにかけようとするが、“あいつはもう夫なんかじゃない” と思うことに決めると、そのまま受話器を戻す。そして、すぐにブリートの部屋を訪れる。マリアナを部屋に迎え入れると、タッパーに入れてあった乾燥した葉のようなものを少し取り出して湯沸かしに入れると、沸騰するまで加熱し、コーヒーカップに入れる(3枚目の写真、矢印)〔ネット上では、昔使われて民族伝承的な堕胎の薬草として、フウセンカズラ、ホオズキ、オオムラサキシキブ、イノコズチ、ハマタイゲキなどの名が挙げられている〕。マリアナは思い切って飲み干す。ブリートは、薬草の入ったタッパーを渡し、「5時間ごとに飲んで」と言いながら、手を拡げて「5」を伝えようとする。マリアナは、お礼を言って出て行く〔内容が内容だけに、ガブリエルに通訳を頼めないのが辛い〕
  
  
  

その夜の深夜にも、ポットで熱した薬草をちゃんと飲んだマリアナは、翌日、ガブリエルとアンドレアに缶の回収を負かすと、建物内のトイレに座って早く堕胎できないかと頑張るが、疲れて顔を洗うと、“こんなこと” をしている自分をじっと見る。カトリック教徒して罪悪感を抱いたマリアナは、教会の階段を上り(2枚目の写真)、扉の前に立つと、少しだけ扉を開け、また閉める。そして、扉の前に立ったまま、「主よ、あたしをお許しください。そして、理解してください。これを乗り越えるために、どうかあたしに力を与えてください」と泣きながら祈る(2枚目の写真)。夜、ベッドの所まで来たブリートは、「マリアナ、出血してる?」と訊く。そして、手を波のように動かしながら、「Blood」と言う。マリアナは、親指で人差し指で1cm以下の空間を作り 「少しだけ」と言う。「いいわ。お茶はもういい」と言って、カップをどける。そして、仰向けになって寝るよう手で指示する。
  
  

母が動けない分、ガブリエルは親しくなったフードトラックの店をきれいにする(1枚目の写真、矢印)。この映画は2008年の撮影だが、驚いたことに、現在のこの地区のフードトラック案内でも、全く同じ色と文字のフードトラックが営業している(2枚目の写真)。16年経っても現役なんて信じられない。ガブリエルは、空き缶の収集にも頑張る(3枚目の写真)。そして、その日の稼ぎをブリートに渡す(4枚目の写真、矢印)。ガブリエルが、「明日はもっと持って来るよ。ありがとう」と言って部屋に向かうと、“お母さん思いの立派な息子” に感心したブリートが、「ありがとう」と声をかける。映画では、その場面はないが、堕胎が無事に終ってマリアナの体力が戻ると、彼女も空き缶集めに参加する。
  
  
  
  

それからどのくらい時間が経ったのかは不明。ある夜、眠っていたガブリエルが目を覚まして小さな照明を点け、マットレスの上で半身を起こす。それに気付いたマリアナも、ガブリエルと並んで半身を起こす。そして、「暑すぎるんでしょ?」と訊く(1枚目の写真)。ガブリエルは頷く。そして、「なぜ、パパは出て行ったの?」と訊く(2枚目の写真)。「分らないわ」と言うと、さらに、「ガビ、あたしたち、もうマイアミには行かない」と、初めてマイアミ行きを否定する。それに対し、ガブリエルは 「分ってる」と答える。「もし、彼が戻ってきたら、会いたい?」。「うん。会うだけなら。パパが無事かどうか確かめるため」。「ママは?」。「あたしは会わない。二度と」。それを聞いて、下を向いたガブリエルに、マリアナは、「ガビ、こんなことになってごめんなさいね」と謝り、ガブリエルは母に抱き着き、マリアナも抱きしめる(3枚目の写真)。
  
  
  

恐らく9月の第1週、3人は、小学校の前まで歩いてくる。そして、門の前まで来ると、マリアナはガブリエルに、「行ってらっしゃい」と声をかける(1枚目の写真)。「学校が終わる頃には、ここで待ってるから」。ガブリエルはアンドレアの頭を軽くポンと叩き、アンドレアはガブリエルに抱き着く。ガブリエルは、初めての学校に向かって歩いて行く。ここで場面は変わり、空き缶の入ったカートを押したマリアナは、アンドレアを連れていつものフードトラックを訪れ、後部ドアを叩く。優しいおばさんがドアを開け(2枚目の写真)、2人は中に入ると、マリアナが持ってきたのか、そこで作ったのか分からないが、エンパナーダを皿に盛る〔外に残したカートはどうなる?〕。店先に出したエンパナーダは、結構人気でよく売れる(3枚目の写真、矢印)。学校では、生徒が一人ずつ立って、夏に何をしたかを話す。ガブリエルの番になると、「やあ、僕の名前はガブリエル・カバル。これがアメリカでの初めての夏だった」と言う(4枚目の写真)。映画は、ガブリエルが着席し、夜の空撮に変わり、フードトラックの前でカンウターを拭いているマリアナと5人の客を映して終わる。暗転すると、3人の「その後」が、英語とスペイン語の文章で紹介される。「マリアナは南カリフォルニアの 5 エーカー〔2㎢〕の牧場で暮らし、会計として働いている。彼女は、再婚し、もう 1 人の娘をもうけた」。「ガブリエルは組織管理学の修士号を取得し、国内最大の私立大学の入学担当部長を務めている。彼は結婚し、3 人の子供たちにとって素晴らしい、愛情深い父親だ」。「アンドレアは美術学の修士号を取得し、脚本家、監督、俳優としてニューヨーク市に住んでいる。彼女は母のために この映画を作った」。
  
  
  
  

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