アメリカ映画 (2010)
タイ・シンプキンス(Ty Simpkins)が少しだけ顔を見せるサスペンス映画。主演ラッセル・クロウの息子ルーク役。息子だから もう少し出番があっていいと思うのだが、ほとんどアップもなく、セルフも極端に少ない端役だ。タイは、『インシディアス』以後、本作、『Arcadia(アルカディアへ』、『アイアンマン3』『ジュラシック・ワールド』などに出演しているが、単独主役がまわってこないうちに少年期を終えてしまった。
映画は、短大教授の妻が、無実なのに殺人容疑で逮捕され、しかも、きわめて不利な状況証拠のため殺人罪が確定してしまう。その妻を救おうと、脱獄を何度も成功させたプロからノウハウを学び、アメリアと犯罪者引渡し条約を結んでいない国への一家ぐるみの脱出を目指し、入念な脱獄計画を練るというストーリー。教授の息子のルークは、母が殺人犯という負い目があるのか、ほとんど無表情と無口を貫いていて、ストーリーに絡むのは、脱出を失敗させる可能性のある動物園のシーンと、空港でのはらはらする出国の場面くらいだ。
タイ・シンプキンスは、長髪の金髪と整った顔立ちで知られているが、この映画では、笑顔は2回のみでごく短時間。後は、ほぼ同じような、少し憮然とした無表情のままなので魅力に乏しい。あらすじも、ルークの登場場面に限定して簡単に紹介するに留める。
あらすじ
映画は、妻が逮捕されるシーンののち、いきなり、数年後のルークの寝姿に変わる〔子役が変わるので、それと分かるだけ〕。ルークがはっきりと登場する場面は、小学校に迎えに行った父に、虐めと喧嘩について話し合うシーン。この時点では、母の有罪は確定し、殺人犯として刑務所に収監されている。父:「なぜ、ランチを盗られた?」。ルーク:「さあ」。「何か言われたか?」。「ママのこと?」。「そうだ」「サムを殴ったのか?」。「うん」。「どこで殴った?」。「運動場」。「じゃ、痛かったろうな?」…といった具合で、あまり意味のない会話だ。その後、父と一緒に母に面会に行くシーンでは、こうした差別が原因で、無口で暗い子に育ってしまったルークが、母から何を話しかけられても、無視して遊び続けるシーンが印象的だ。
次の登場シーンは、父にいつも連れて来てもらう放課後の遊び場で。そこでキャリーという女の子と知り合う。最後の動物園の場面の伏線となる女の子だ。遊び終わって、「楽しかったか?」と訊かれ、「うん」と答えて顔を見合わせる父子。微笑みあう父子がいい。父子の関係を描いたもう1つのシーン。ベッドで、父が、母からの手紙をルークに読んでいる。ルークは手紙に全く関心がない。「返事を書かないとな?」と言われて、「25セント玉ちょうだい」と話題を変え、コインで満杯になったガラス瓶を指し示す。「全部もらっていい?」。このコインも、最後の空港でのシーンの伏線になっている。
次の登場シーンは、妻の脱出プランを作り始めてからの初期のシーン。偽造ポスポートを依頼しようとして、逆に金を盗まれ、顔を殴られた父。車の中で、「顔、痛い?」と訊くルーク。「少しな」。「やり返した?」。「いいや、してない」。「それが いいよ」。ルークの顔の表情は一切変わらない。何事にも無関心なのか? 次のシーンは、映画が6割を過ぎてから。祖父の家で。父は、先に偽造ポスポートで自分を騙した麻薬犯罪者のアジトを襲撃し、殺人強盗+放火+死体遺棄という重犯罪を犯した直後、祖父の家に疲労困憊して辿り着き、預けておいたルークを引き取ろうとする。その際、祖父は、財布の中にあったカナディアン・サウス航空のチケット2枚を見てしまい、これから息子が何をする気か察してしまう〔飛行機の目的地は、当然画面には映らない〕。朝まで寝てしまい、家を出る父子。ルークと祖父の別れ。ルークが「じゃあね、おじいちゃん」と言うと、2回目で最後のルークの微笑みが見られる。一方の父と祖父の別れ。行き先を知っている祖父は、息子に対して握手を求めた。そして、しっかり抱き締め、「さよならだ」。今生の別れと分かっているからだ。
そして、いよいよ脱獄計画の始動。定期的に収監者の血液検査結果を届ける検査会社のバンに侵入し、妻の血糖値を異常に高くした検査用紙とすり替える。そして、その結果を受けて緊急入院する妻を病院で確保し、かねて決めておいた巧みなルートで逃走に成功。しかし、ルークを引き取りに、キャリーの自宅に行くと、誕生日パーティは動物園でやっているとのこと。一瞬一瞬が貴重なので、動物園まで行っている時間はないと判断し、2人だけで空港に向かう決断をする父。そしてそれを、命を賭けて阻止する妻〔乗っていた助手席のドアを開け、半身を乗り出したため、後続の大型トレーラーにぶつかりそうになった〕。その覚悟を見て、父は、動物園までルークを迎えに行くことにする。動物園で対面する母と子。しかし、ルークの顔は無感動なままだ。
高速道路の検問の突破に奇策を思いついた父。「親子3人連れに要注意」という情報の裏をかき、老父婦を「安価な有料」でバッファローまで同乗させてあげて、5人で検問を突破する。そして、空港へ。空港では、ルークがポケットにぎっしり詰めてきたコインが金属探知機にひっかかり、貴重な時間を失う。しかし、出国審査にはぎりぎり間に合い、父が救出作戦用にかつて部屋に貼っておいた地図に忍び込ませた誤情報が効を奏して、搭乗直前の逮捕も免れ、無事ベネズエラ行きの飛行機に3人揃って乗ることができた。最後の写真は、ベネズエラの海岸沿いに走るタクシーの中で、眠りこけるルークだ。
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