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The Hobbit: The Battle of the Five Armies
     ホビット/決戦のゆくえ

ニュージーランド映画 (2014)

ジョン・ベル(John Bell)が『ホビット』の湖の町の射手バードの息子ベイン役を第2部と第3部で演じている。原作には出て来ない役で、第3話でバードが邪竜スマウグと戦う見せ場のシーンを盛り上げるために導入されたのではないか。従って、第3部では、第2部と違い、映画冒頭の見せ場であるスマウグとの戦闘シーンでジョン・ベルが大活躍する姿が見られる。

『ホビット』第3部は、第2部のラストシーン、すなわち、スマウグが復讐のため、湖の町に飛来し、火焔を放つところが実質的なスタートとなる。町の人々が逃げまどい、欲張りな統領と腰巾着がお宝を舟に満載して逃げ出す。そんな中、ギリオン王の直系の子孫であるバードは、町で一番高い塔に登り、竜を倒すことできる1本しかない黒い矢を使い、息子のベインと力を合わせて竜と対決する。そして竜が死に、町が焼失した後は、町のリーダーとして民をかつて住んでいた谷間の国デイルの廃墟に導く。そして、オーク軍の侵略を受けて、町の防衛に奔走する。この部分の映画の主役はバードではないが、ここはジョン・ベルの紹介の場であり、あらすじでは、バード家の部分のみを紹介する。なお、映画の中でバード、ベイン、ソーリンと発音されているものをバルド、バイン、トーリンとは標記しない。

『ホビット』は3部同時に撮影され、さらに編集時に追加撮影も行っている。大人の場合には問題ないが、ジョン・ベルのような少年だと、数年の差は大きく、幼く見えるジョンと青年のようなジョンが混在している。その差は、第3部の方が目立つ。登場場面や、顔のクローズアップは第3部の方がずっと多いので、ジョン・ベルらしい表情も見られる。また、本格的な戦闘シーンもあるが、その激しさは『タイタンの逆襲』の比ではない。


あらすじ

スマウグが町への攻撃を開始するシーン。竜はこのまま一直線に町を焼き払い、何度も舞い戻っては、町中を炎の海に変える。
  

統領に捕らえられていたバードは、牢の窓の鉄棒に縛りつけたロープを、財宝を満載して逃げようる舟上の統領に投げ掛け、その衝撃で脱出に成功する(写真は投げられたロープ)。牢を出たバードは、すぐに町で一番高い塔の天辺に登る。眼下は一面が火の海だ。そこから手持ちの弓で竜を射るが、堅い鱗に当たって跳ね返されるだけだ。
  
  

ベインは、一家で逃れる舟に乗っていて、塔の上の父に気付く。「あの矢では竜の肌を貫けない。やっても無駄ね」というエルフの女性の言葉を聞き、父に言われて舟に隠した黒い矢のことを思い出す(第2部参照)。ちょうど、すぐそばにその舟がある。ベインは、運河に出ていた木のクレーンのフックを決死の思いでつかみ、岸に飛び移り、舟から黒い矢を取り出す。
  
  
  

ベインは、その黒い矢を、父の陣取る塔の天辺まで持っていく。いきなり顔を出した息子に、「ベイン! 何してる。逃げるんだ」。「助けにきたんだ」。「もう止められん」。「これがあるよ」と言って黒い矢を見せる。その時のジョン・ベルの表情がとてもいい。
  
  

父が「戻れ、今すぐだ」と言った瞬間、塔は竜の攻撃を受け、屋根が吹き飛び、ベインも飛ばされてしまう。右手で黒い矢を握りしめ、左手1本で塔につかまるベイン。父に引っ張りあげられて、しばらくは放心状態だ。弓が折れてしまったので、黒い矢を手に作戦を考えるバード。
  
  

結局、2本の柱に折れた弓を刺し込んで、その間に弦を張り、弓節の代りに息子の左肩を使うことにする。「じっとしてろ、ベイン」と父。写真は竜側とバード側から見た弓の状態。おどおどしたベインの表情が如何にもリアル。だって、背後にいる竜が見えないのだから怖いのは当たり前だ。監督もこの構図が撮りたくてベインという役を創出したのだと思う。
  
  

ここから先は、映画館と同じ横長のサイズで、激しい戦闘の連続映像を紹介したい。①竜が、傾きかけた塔を真っ直ぐ睨みながら、「そいつはお前の子か? 火からは助けられんぞ。俺が焼いてやる」「答えよ… 弱き者よ… なぜ俺に挑戦するのだ?」と告げる。ここで、父は“伝説の竜の欠けた鱗”の場所を発見する。竜が、「残された道は… 死あるのみ」と言いながら飛び立つと、②慄いて振り返ろうとするベイン。③父は「ベイン、父さんを見ろ」と落ち着かせ、さらに冷静に竜を見て、「もう少し左」「それでいい」と矢の向きを微調整する。そして、④射た矢が手を離れ、⑤ベインの首の横を掠めて、⑥竜に向かって飛んでいき、⑦鱗の欠けた部分に命中。突進してきた竜が塔に当たって、⑧塔と一緒に落ちていく親子。父が「つかまってろ!」と叫ぶ。壮絶なシーンだ。こんなところに子役をもってくるとは、監督のピーター・ジャクソン(Peter Jackson)の発想はすごい。バード一人より緊迫感がうんと増すからだ
  

黒い矢に貫かれ、死んで町に向かって落下していくスマウグ。
  

塔は崩壊したが、幸い父子とも無事だった。湖岸で父を見つけ、指導力を発揮しているのを尊敬して見るベイン。町は竜に燃え尽くされたため、もう湖畔ではこれから来る寒い冬を耐え忍べないと判断したバードは、生き残った町民を連れ谷間の国デイルの廃墟に連れて行く。
  
  

この先は、しばらくバード親子とは関係のないシーンが続くので省略する。次の写真は、原野での戦いを有利に運ぶため、オーク軍を指揮するアゾグが「二面攻撃だ」と命令し、デイルに侵入していくシーンから。町に襲いかかる凶暴な敵に逃げまどう人々。姉と妹のシグリッド、ティルダの行方を心配して探すベイン。
  
  

ベインは、姉妹がオークに襲われそうになるのに間に合い、慣れない剣で必死に戦う。『ロード・オブ・ザ・リング』のフロドたちホビットより、戦いぶりが本格的だ。幸い何とか殺すことができて、姉妹を救う。
  
  

一方、バードは、まだ子供たちに会えていない。無事を確かめたいバード。ようやく見つけた時、子供たち3人の前にトロルが迫っていた。坂の上から転がし、暴走する荷車に乗って助けに行くバード。特撮とは分かっていても手に汗握るシーンだ。
  
  

戦いは町全体に広がり、人間たちの“間に合わせ”の軍隊では劣勢は目に見えている。バードはベインに、「お前は、女、子供を集めて大会堂に入れ、扉を堅く閉ざせ。いいな? 何があろうと外へ出てはならん」と命じる。その言葉に従い、「大会堂へ」と叫んで人々を誘導するベイン。
  
  
  

ここで、激しい戦闘シーンが延々と続き、最後にオーク軍が敗退する。この映画の一方の主役だったゴブリンの王ソーリンは死に、町の民は巨大なホルンを吹いて弔意を表している。その中にはベインの姿も。
  
  

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