アメリカ映画 (2013)
フィンリー・ジェイコブセン(Finley Jacobsen)が、脇役で顔を見せるアクション大作映画。ホワイトハウスがテロリストの奇襲を受け、大統領が人質になり、1人のヒーローが救うという設定は、『ホワイトハウス・ダウン』とよく似ている。公開年も偶然同じ。本作の方が、3ヶ月だけ早く公開された。予算は、本作は『ホワイトハウス・ダウン』の半額以下(7000万ドル)だが、全米収入では、逆に1億ドル弱と後発作の1.35倍稼いでいる。やはり、最初に公開した分、話題を呼んでヒットし、数ヶ月の差で似たような映画を公開したのは失敗だったのであろう。ただ、両方を見比べても、本作の方がよく出来ていると思う。『ホワイトハウス・ダウン』では、少女子役のジョーイ・キング(Joey King)が結構活躍するが、それは若干年上だからであろう。本作のフィンリーは、大統領の息子の役だが、救出されるだけで、積極的な活躍は何一つしない。
ホワイトハウス襲撃の1年半前の真冬のキャンプ・デービッドから映画は始まる。大統領の息子コナーは、シークレット・サービスの統括者マイクと大の仲良し。ところが、大富豪のクリスマス・パーティに選挙キャンペーンを兼ねて夜の雪道を走る大統領の車列で事故が発生、コナーの目の前で母が車とともに転落死する。そしてマイクは左遷。その1年半後の夏の初め。ホワイトハウスが突如、巧妙な手口でテロリスト集団に占拠され、大統領らが人質となる。コナーは、たまたま近くにいて、救援に駆けつけたマイクの手で無事救出される。その後、マイクとテロリストの間で壮絶な戦いがくり広げられ、最後は、テロリストのボスを殺し、大統領の救出に成功する。
フィンリー・ジェイコブセンは、結構可愛い子役だが、TVには全然出演しないため、見る機会は非常に少ない。そこで、出番は少ないが、結構好演しているこの映画を代表作と考え、出演する場面を克明に取り上げてみた。あらすじは、フィンリーに無関係の95%はすべて除外してある。
あらすじ
真冬のキャンプ・デービッドに滞在中の大統領一家。近くに住む億万長者のクリスマス・パーティに、再選のための選挙活動を兼ねて一家で参加しようと考える。そして、全体を仕切っているシークレット・サービスのマイクに一人息子のコナーを呼びに行かせる。戦闘的なコンピュータ・ゲームに熱中しているコナー。マイクから、「ママにこんなとこ見られたら、本物の虐殺が始まるぞ」と言われ、「最低」とつぶやいてやめる。大統領の息子に対し、乱暴な口のきき方のようだが、この2人、とても仲がいいのだ。だから、父である大統領に、「ホントに僕も行くの? 忙しいんだけど」と頼んで断られた時も、「せめて マイクと一緒に行かせてよ」とおねだりする。「マイク、一緒に乗っていい?」。「いいとも」。代りに、部下が大統領専用車の助手席に座ることになり、結果的に命を落とすので、この乗り換えは重要なポイントだ。
雪道をひた走る5台の車。映画の撮影が真夏なので、フルCGだが、違和感は全くない。コナーの乗った3台目の車内では、マイクとコナーがじゃれ合っている。「コナー、下がって、シートベルトするんだ」。「しなかったら?」。「オニールに タマを殴られるぞ。さあ」。親しいとはいえ、表現が少しえげつないのでは? マイクが他の2人に「180度 警戒してろ」と注意喚起すると、コナーはすぐ、「360度 の間違いだよね?」と指摘。「ちょっと確認しただけさ」。「それって、言い訳だろ」。「分かった。じゃあ、ハワイトハウス西棟に非常口は幾つある?」。「8」。「執務室から、危機管理センターのエレベーターまでは何フィート?」。「116」。「エレベーターのドアが閉まってから、危機管理センターに着くまでの時間は?」。「4分」。「監視カメラで、録音機能付きは?」。「公的部分のカメラだけ」。マイクからは、部下に、「すごい子だろ」と自慢げに言われ、部下からも「俺たちのクビも危ないな」とおだてられ、にんまりするコナー。直後に、マイクに「シートベルトをちゃんとしてればな」と釘をさされる。一行が橋にさしかかった時、先頭車両のフロントガラスに、積雪で折れた枝が落下し、氷結した橋上でスピン、180度回転して大統領専用車とぶつかり、その衝撃で、欄干を突き破って谷に落下する。大統領専用車も橋上を横滑りして欄干に激突し、車体が半分以上空中に突き出る。大急ぎで走り寄ったエージェント達が必死でトランクを押さえるが、重心が橋の外に出ているので、いつ何時落下するか分からない。後部座席の大統領側のドアだけが開いたので、マイクが、「申し訳ない」と言いつつ大統領のシートベルトを切り、助け出した瞬間に、車はけがをした夫人ごと谷に落下していった。それを見ていて、「ママ!」と叫ぶコナー。衝撃的なオープニングだ。
悲惨な事故から18ヶ月後。当然、再選された後での話ということになる。まず、最初に映し出されるホワイトハウス。もちろん、ワシントンにあるホワイトハウスではない。映画のための実物大のセット。周辺の樹木と屋根はCG合成。さて、大統領執務室では、一人で本を読んでいる寂しげなコナーの気を引こうと、大統領が話しかけてくる。「なあ、これ どう思う? どっちがいい?」。これから会う韓国の首相〔大統領ではなく首相というのも変だが〕のために着けるネクタイ選びを頼んだのだ。「分からない」と、コナーはあまり乗り気でない。大統領が、夏をキャンプ・デービッドで過ごそうと言い出すと、母を亡くした場所だけに、「キャンプ・デービッドは嫌い。行かないとダメ? どこか他に行けない? ええと、海岸とか?」と反対する。「あと3分ある。急いでキッチンへ行って、アイスクリームを食べよう。チョコチップがいいか、マシュマロ入りか?」。やっとコナーに笑顔が出る。「マシュマロ入り。この前は、パパが全部食べちゃったから」。「覚えてないな」。「食べたよ」。しかし、予定より早く「大統領、お時間です」とのお呼びがかかり、コナーはまた一人で残されることに。
ここまでで17分。次のコナーの登場は、映画開始からちょうど1時間後。ホワイトハウスはすでに、北朝鮮生まれで、KUFという架空の民兵組織のボス、カン・ユンサク率いる総勢40名のテロリストによって占領され、大統領らはバンカーと呼ばれる地下の危機管理センターに監禁されている。そこに単身潜入したのが、1年半前の事故で大統領夫人を死なせた警備ミスの責任を問われ、財務省に出向になっているマイク。テロリストが、大統領を降伏させるキーパーソンとしてコナーを探しているのを知り〔手下がコナーの写真を持っていた〕、コナーの隠れていそうな場所を探しに行く。そこは、トルーマン大統領により、1949年、石壁の周りに鋼鉄製の壁を造った隙間。いわば、「壁の裏側」だ。マイクの予想通りの場所で、コナーを発見する。しっかりと抱き合う2人。「無事か?」。「うん、大丈夫」。「ここは、お気に入りの隠れ場所だな」。「パパは?」。「パパなら大丈夫だ。悪いことなんか何も起きない。全力で外に出してみせる」。
真剣な顔で聞き入るコナー。
マイクは、壁の向こう側にテロリストが捜査に来ていることを知っているので、この危険な場所から一刻も早く抜け出そうとする。一方、テロリスト側も、壁の裏側に隠れる空間があるという情報をボスから受け取り、機関銃を壁に向ける。マイクがコナーと共に走り始めるのと、テロリストが乱射を始めるのとは、ほぼ同時だった。テロリストの方角に向かい、銃を撃ちながら決死に走るマイク。危機一髪、修羅場を脱出し、「大丈夫か?」と安否確認(2枚目の写真)。
そして、何とかバレずに廊下に出る。「じゃあ、ここから出るぞ。走れるな?」。「うん」。「離れるなよ」。「分かった」。「行くぞ」。そのまま、気付かれずに脱出口に向けて走る。そこは、ホワイトハウスの北西の角にある通気シャフトの通気口だった。「背後を 見張っててくれ」と声をかけておいて(1枚目の写真)、通気口のカバーを外すマイク〔後ろを向かないと外せない〕。その小さな開口部を見て、「マイクも通り抜けられる? 一緒に来るんだよね?」と心細げに訊くコナー。しかし、マイクは、「パパを迎えに行かないとな。いいか、君ならできる。中庭で、煙突の登り方 教えたのを覚えてるだろ? それと同じだ。いいな? 片足は前の壁、もう片足は後ろの壁で踏ん張る。そのまま てっぺんまで登るんだ」と指示する(2枚目の写真)。
何と言ってもまだ小学生。「怖いよ」。「俺もだよ。だが、君ならやれる」。そして、財務省の徽章を見せ、「もう俺たちの一員だ。これは君のだ。付けてやる」。コナーの顔がほころぶ。「さあ、頼むぜ、相棒」と、徽章をズボンに付けてやる。
「いいか、押し上げるぞ」と、コナーを開口部に押し込むマイク。「また 外で会おう。さあ、登るんだ」。しかし、そこへ1人のテロリストが捜索に現れる。「コナー、待て」と言い、こっそり敵に近付き、音を立てずに首の骨を折るマイク。特殊部隊にいただけあって強い。開口部からマイクの顔が覗き、「誤報だ、行け」。手と足を踏ん張って登っていくコナー。
マイクからの通報を受け、通気シャフトの出口に到着した救出班。鉄柵の向こうにコナーの顔が見える。救い出されて、安全地帯に運ばれていく。このシーン約6分。コナーの見せ場はここだけ。
マイクは、超人的な頑張りで、カン・ユンサクを殺し、この男が起動させたセルベルス・システムの自爆モード〔全米の核弾頭を搭載したミサイルをその場で自爆させる〕を停止させるのに、ぎりぎり間に合った。ここまで、コナーが脱出してから40分。壮絶なシーンの連続だ。マイクは、腹部を撃たれた大統領を連れてホワイトハウスの外へ。待っていたコナーが、思い切り抱きつく。
エンディング。破壊されたホワイトハウスの上で星条旗を揚げる兵士達。背後には、テロリストの飛行機がぶつかって破壊されたワシントン記念塔が見える。記者を前にした大統領の演説を聴くマイクとコナー。並んでみると、コナーはやはり小さい。この大活躍で、マイクは、元のシークレット・サービスに復職できた。勲章ぐらいもらってもいいと思うのだが。
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